国内企業は賃上げしたくても簡単にはできない
図表2をもう一度ご覧ください。消費者物価の右にあるのは「企業物価」です。企業物価は企業の仕入れの数字ですが、2022年に入り9%以上の上昇が続いています。9月は10%を超えていました。消費者物価と比べるととても大きな上昇です。
問題はここにあります。この数字を見る限りは、企業は仕入れの増加分を十分には最終消費財に転嫁できていないことになります。つまり、儲かっていないというよりは、その分、利益を削っているのです。もちろん、先にも述べたように最終消費財への転嫁は進みつつありますが、十分ではないのです。
この状況では、十分な賃上げは望み薄です。とくに、国内だけで事業活動する多くの中小企業では、政府や連合、経団連が望むような賃上げはまず無理と考えたほうがいいでしょう。
こう言うと、過去最高の利益を出している企業も多くあるではないかとの反論を受けますが、大手商社や大手機械メーカーなど、海外で活躍するグローバル企業がほとんどです。海外では仕入れ増加分の価格転嫁が比較的スムーズに進んだので、業績を上げやすいのです。たとえば、2022年11月の米国の卸売物価の上昇率は前年比で7.4%、消費者物価の上昇率は7.1%です。企業は仕入れに利益を乗せて販売しているので、ほぼ完全に価格転嫁ができていると言えます。
一方、日本の場合はここで見たように、国内だけの数字で言えば、十分に価格転嫁が進んでいないのが現状です。つまり、このままでは、グローバル企業をのぞいては、十分な賃上げをするのが難しいということです。国内で働く人の7割は中小企業に勤めています。
そうなると、日本国内の今年の景気は、インバウンドの動向にもよりますが、あまり拡大は期待できないということでしょう。ウィズコロナの経済活動にも慣れ、少しは明るさもありますが、金利が上昇する可能性もあり、昨年よりはマシとは思いますが、なかなか難しいのではないでしょうか。