多角化だけでは解決しない

地銀再編や地銀衰退が叫ばれて久しい。人口減少が進む一方、ネット銀行など異業種の進出も続き、利ざやの改善だけでは、先行きは厳しい。

このため、自己資本比率規制など、銀行に課せられた厳しい規制から逃れるため、地銀のなかから、銀行免許を返上してノンバンクとなる、地域商社や人材紹介会社、M&Aや事業承継仲介会社、として生き残る、といったことも考えられよう。

銀行の看板
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

その場合も店舗や人員のリストラが大前提にはなる。

足元のコロナ禍や物価高で、多くの個人、企業、自治体も四苦八苦し、家計や業務や財政もみなリストラなど痛みを伴いながらも、やりくりするなか、地銀だけは利上げの恩恵を受けて、リストラもなく無傷で大丈夫というわけにはいかない。

地元住民や企業などの離反により、地銀にとって最も大切な信用力が失われる事態となる前に、リストラや合従連衡など、自ら律し、行動する必要がある。

地銀再編はこの先も続く

実際、政府や金融当局が地銀再編を後押しする動きも活発だ。

2020年10月:福井県の福井銀行と福邦銀行が経営統合。

2022年4月:青森銀行とみちのく銀行が持ち株会社プロクレアホールディングス(プロクレアHD)を設立。

2022年9月:長野県の八十二銀行と長野銀行が経営統合を目指すことで基本合意。八十二銀行が長野銀行を2023年6月に完全子会社化し、さらにその2年後の2025年を目途に合併予定。

2022年10月:愛知県の愛知銀行と中京銀行が持ち株会社「あいちフィナンシャルグループ(あいちFG)を設立し、2024年に合併予定。

全国各地で同一県内の地銀同士で再編を進める動きが相次いでおり、地銀「一県一行」に向けての動きはこの先も続くことになろう。

前述したような厳しい経営環境の中、一筋の光となりそうなのが、インバウンドによる国内観光振興だ。地方経済の活性化は、無論、地銀の業績には追い風となる。円安による企業の国内回帰やインバウンドで地域経済と地銀が潤うことで、東京や「札仙広福」など一部に集中していた地価上昇効果が、より広い範囲に広がっていく可能性もでてこよう。

「日銀ショック」により長期金利が上昇し、地銀を取り巻く事業環境が大きく変わろうとするなか、政府・金融当局による地銀再編を後押しする動きもあり、地銀の合従連衡や非金融ビジネスの拡大など多角化はこの先も進むことになる。リストラを伴うか否か、「顧客目線」と「収益目線」があるか否かが、成否を分けることになろう。

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