不良債権の増加や含み損の拡大も

しかしながら、「日銀ショック」は、地銀にとってもいい話ばかりではない。貸出金利の上昇は、借入側の企業にとっては、利払い負担の増加を意味することになる。すでに返済が始まっているコロナ対策の無利子・無担保融資である「ゼロゼロ融資」の滞りや倒産の増加などとあわせ、地銀の不良債権が増えていく可能性もある。

企業だけではない。個人にとっても住宅ローンの金利上昇と利払い増加により、ただでさえ物価高で逼迫ひっぱくする家計が悪化し、延滞や不良債権化が増える懸念もある。

ATMを利用する人
写真=iStock.com/Tamer Dagas
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さらに問題なのは、地銀が保有する大量の国債だ。地銀は、コロナ禍でも流入を続ける預金を貸出に回すだけではさばけず、余剰資金を国債など有価証券で運用している。地銀全体の国債残高は17兆7815億円(2022年3月末残)に達しており、長期金利が上昇すれば国債価格は下落することになって、その分、含み損を抱えることになる。すでに、米国の利上げにより米国債など外国有価証券で含み損を抱える多くの地銀にとって、日本の国債まで含み損を抱えることになれば、大きな打撃となり経営の重しとなる。

そもそも、この先、仮に日銀の金融政策変更を受けて、貸出金利が引き上げられ、利ざや改善により地銀の業績が回復したとしても、長続きはしないのかもしれない。

なぜなら、

① 人口減少や過疎化による地元市場の縮小
② 異業種の進出やデジタル化の進展による地銀離れ

といったより根本的な問題は解決しておらず、本業であり地銀3大ビジネスである貸出・手数料・有価証券運用の見通しはどれも明るくないのだ。