地銀が「電力子会社」も設立

こうした根本的な問題をなんとか打開するため、地方銀行では急ピッチで新ビジネスへの参入により多角化を進めている。

特に、2021年の銀行法改正を伴う規制緩和により、地銀は子会社を活用した幅広い業務への参入が可能になった。金融庁から「地域活性化や持続可能な社会の構築に資する」として「他業銀行業高度化等会社」の認可を受ければ、業種に関係なくさまざまな事業を営む子会社を持つことができるようになったことで、その動きは加速している。

すでに、多くの地銀において地域商社や人材紹介子会社、コンサル子会社、観光子会社や農業子会社などが設立されている。

さらに、地銀による電力子会社の設立など電力事業参入も増えている。再生可能エネルギーの発電と供給などを通じて、地域社会における脱炭素化の促進を目指しているという。

2022年7月:山陰合同銀行が銀行で初めて電力子会社「ごうぎんエナジー」を設立

2022年7月:常陽銀行は、電力子会社「常陽グリーンエナジー」を設立。電源取得のため、3年で約50億円を投資する予定。また、自家消費型の太陽光発電設備の導入促進事業も手掛ける。

2022年10月:八十二銀行が、地域商社事業と電力事業を手掛ける完全子会社「八十二Link Nagano」を設立。

多角化を担う新設子会社の大多数は赤字

地銀は、人口減少や低金利、ネット銀行など異業種の進出により先行きが厳しいなか、電力子会社や地域商社など銀行本体以外の業務に対する期待は大きい。

もっとも、本業からの利ざやや手数料の減少を補うために設立した、こうした子会社の大多数は、設立後間もないこともあり赤字だ。子会社としていかにして事業を軌道にのせ黒字化し、収益貢献していくかが今後の課題ではあるが、業績の開示や収益計画の開示が十分でない子会社も多く、思惑通りうまくいかない可能性が高い。

そのワケは、「顧客目線」と「収益目線」がないことに尽きる。もっとも、地銀を笑っていられない企業は山ほどある。同じ様に業界全体でマクロ的な根本問題を抱えながらも、横並びでお互いに身動きがとれず、顧客目線や収益目線もなく、ただ闇雲に拡大路線や多角化戦略をとる業界や企業は多い。

スマホでネットショッピングをする人
写真=iStock.com/Marut Khobtakhob
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