失明原因と近視との強い関係性
――近視の問題が失明につながる可能性があるのでしょうか?
大体の方が「スマホを使いすぎても、せいぜい近視が進むだけでしょう」と考えているかもしれませんが、実は、日本人の「失明原因」の第5位は、近視が進行して発症する「強度近視」です。
さらに言うと、第1位の「緑内障」や、第4位の「黄斑変性症」の発症に関しても、近視との強い関係が指摘されています。
ちなみに、特に近視問題が深刻な中国の都市部では、失明原因の第1位が「近視」とされていることもあり、かなりの危機感を持って対策しているようです。
強度近視や緑内障といった失明に至る目の病気は、中高年になったからといって急に発症するわけではなく、子どもの頃に始まった近視が原因で長い時間をかけ進行した結果、発病します。その意味では、強度近視や緑内障は、糖尿病や脳卒中と同じ「生活習慣病」と言えると私は思います。
――失明というと、完全に視力を失うということですか?
いえ、それだけではなく、眼鏡をかけた時の矯正視力「0.1」を下回る「社会的失明」や、疾病などによる「機能的失明」なども含めて考えています。完全に視力を失わなくても、「社会的・機能的失明」に至れば運転免許証を取得できない、新聞や本、街中の交通標識や看板なども判読できないなど生活に支障をきたし、「人生の質」が大きく下がります。人生100年と言われるこの時代、近視の進行を抑制し、失明を予防する必要性は大きいと思います。
近視対策の先進国と後進国
――先ほど、中国ではかなりの危機感を持って対策しているとお話しされました。
そうですね。中国ではすでに約20億円の巨費を投じて5つの近視研究拠点を設立しており、小中学校の一部では、眼科の医療機器をIoT化することで、視力や眼軸長(後述)などの測定データを自動でクラウドへアップロードし、リアルタイム分析してくれるサービスを導入していたりします。
また、近業を行うときの目とモノとの距離と、近業継続時間を最適化できる「CloudClip」というデバイスが開発・市販されています。こういった対策は近視進行の先にある大量失明社会が出現すれば、国家としての大きな損失につながると考えているからでしょう。
こうした対策に乗り出しているのは中国だけではありません。オーストラリアや台湾でも、やはり国を挙げての先進的な近視研究が進められています。