心わしづかみにされ心拍数急上昇

3位 鈴木杏

「空白を満たしなさい」30点、「拾われた男」5点(ともにNHK)。計35点。

女優の鈴木杏さん
画像提供=フォスター、撮影:近藤誠司

夫が自ら命を絶つ。幼子ひとりを抱え、悲しみと不安に押しつぶされそうになるも、何とか踏ん張る。ところが、その3年後に夫が生き返って戻って来る。

「空白を~」で主役(柄本佑)の妻の役は、嬉しいとか怖いとか悲しいとか気持ち悪いとか、ひとつの形容詞では表せないくらい、多岐にわたる複雑な感情の乱高下がある難役だった。鈴木杏のすごみがすべてここに注ぎ込まれた、そんな気がした。

しかも母親と不仲で、背景には教育虐待といってもいい幼少期の辛い経験も。なんともいえない表情に魅せられたし、心拍数も急上昇させられた。お見事。

その直後に「拾われた男」で、怜悧なマネージャー役を演じていて、主人公(仲野太賀)への塩対応がおかしくておかしくて。そのギャップ!

出演作品数は少ないが、心わしづかみ率の高さから3位に。

呼吸を忘れるほど素晴らしかった北条政子

2位 小池栄子

「鎌倉殿の13人」30点、「競争の番人」(フジ)10点。計40点。

言うまでもなく、「鎌倉殿」の北条政子役は最高だった。ふがいない弟や頼りにならない父、面倒くさい義母にひと言余計な妹、そして問題と軋轢を生んだ最愛の夫……。

前半は完全に「長女の憂い」「墓守娘」状態。いや、可愛らしい女の嫉妬や見栄というコミカルな場面では顔芸も披露。物語が進むにつれ、夫や子が亡くなり、息子も父も弟も権力で変わっていくさまをやりきれない思いで見つめる。慈悲深さを湛えた表情。北条家と御家人を守るために、毅然きぜんとした態度で坂東武者の誇りを説く。

最終回、義時とのラストシーンは呼吸を忘れさせた。義時の激変と政子の不変はセットなのだと改めて思い知らされた。すごかったわー。

「競争の番人」では、公正取引委員会の主査役。変わりものやはみ出し者、上意下達のTHE公務員がいる部署で、唯一まともというか、頼れるバランサーだった。こういう女性がきっとどこの部署にもいて、補ってくれているんだろうなと。悪女役よりも、まともで知的で常識のある女性上司役のほうが似合うと改めて思った。