7位 高橋一生

「恋せぬふたり」30点、「岸辺露伴は動かない」5点(ともにNHK)。計35点。

恋愛もセックスもしないアロマンティック・アセクシュアルの男性を演じた「恋せぬふたり」は適役。普通を押し付ける世の中の無神経さに腹を立て、時に理路整然と反発する姿はもちろんだが、さりげない好意や配慮の表現は格別。また、漫画の奇想天外な世界を体現した「岸辺露伴~」は、別次元の趣がしっくりハマった。

主役ではないが好演が光った

基本的に、メディアでは主演俳優や主演作だけが取り上げられがちだが、名アシストも評価されるべき。多くの作品に出演していた役者にスポットライトを。

6位 尾上松也

「親愛なる僕へ殺意をこめて」(フジ)30点、「まったり!赤胴鈴之助」(BSテレ東)5点。計35点。

鳥肌モノの残虐非道な半グレリーダー、昭和漫画の少年ヒーローを令和でギャグ化。他にも、陰気でうだつの上がらない長男役(「やんごとなき一族」フジ)、他力本願で楽観的な刑事役(「ミステリと言う勿れ」フジ)、蹴鞠しゅうきくが似合う負けず嫌いのやんごとなき策士(鎌倉殿)……今年はマツヤラッシュといってもよい。ボトムからトップまで演じる役の振り幅! つい目がいっちゃうんだよ。

5位 笠松将

「TOKYO VICE」(WOWOW)30点、「エロい彼氏が私を魅わす」(フジ)10点。計40点。

笠松の筋肉を密かに愛でる女性は少なくない。その魅力を存分に活かしたのは「エロい彼氏~」のまなぶ役。工事現場で働く姿といい、まっすぐな心根といい、夢と妄想を与えてくれた(私に)。

が、メインは「TOKYO VICE」の若きヤクザ・佐藤役。暴対法施行前の1990年代、新聞記者と刑事とヤクザ、それぞれの思惑と身過ぎ世過ぎを描く硬派な作品だ。

笠松は元宣教師でワケありのホステス・サマンサ(レイチェル・ケラー)と恋に落ちる。ヤクザの青春&純愛という「甘さ」と、仁義か人の心かで揺らぐ「つらさ」の両極を繊細に表現。この役で飛躍の予感。

暗躍という言葉が似合う名俳優

4位 岡部たかし

「エルピス」(フジ)30点、「あなたのブツが、ここに」(NHK)10点、他10点。計50点。

ちょいと遊び人の運送会社社長で、コロナにかかり、隔離期間に孤独と向き合うという生々しい役を演じたのが「あなたのブツが、ここに」だ。陽性者の胸の内を吐露する(浮気性も反省する)という重要かつ世相を表す役がぴったりでね。そもそもちょっぴり情けない役が抜群の岡部だが、今年はわりと「正義」の人だった。

セクハラ・パワハラ発言に始まり、古巣の報道局を悪しざまに侮辱する、激しくひねたテレビマン・村井を演じたのが「エルピス」。口は悪いが、正義を貫くしんどさを知っている。本当は部下を守りたい人なのだと、超絶長いセリフから滲み出ていて感心した。

「17才の帝国」(NHK)では、総理大臣の息子で秘書だったが、汚れきった政界(と父親)に絶望し、政界を離れたという役どころ。「インビジブル」(TBS)でも経産省官僚に脅迫される下請け建設会社社長役。家族を守るという正義のために、暗殺組織に殺害を依頼し、自らも犠牲になろうとした。斜に構えたり、身を引いたりで、良くも悪くも正義の人という印象の2022年。

あ、「空白を満たしなさい」では四角四面で慇懃無礼な保健所窓口の人も適役だった。

岡部愛・たかし贔屓。来年も暗躍を期待するひとりである。