カクテルに味噌を入れているのは、このバーに限らない。米カリフォルニア州の情報サイト「モントレー・カントリー・ウイークリー」は、新しい世代のバーテンダーたちが味噌や海藻などをウォッシュ(フレーバーと口当たりを変化させること)に使う方法を学んでいると報じている。
味噌のほか、わさびもカクテルに取り入れられているようだ。英ガーディアン紙は、モスコミュールならぬ「ワサビミュール」のレシピを掲載している。
しその葉でしそシロップを作り、ウオッカにこのシロップと小さじ2分の1杯ほどのチューブわさびなど各種素材を混ぜ、シェイカーで振るというものだ。ピリッとした風味がカクテルの味わいを引き締めてくれそうだ。
各地の食文化と融合する「日本食」の懐の広さ
このように海外のさまざまな地域において、独創的な一皿が楽しまれているようだ。海外の文化と日本の食材がフュージョンしたフードは、私たちの感覚とはかけ離れていて斬新にも感じられる。
もはや日本食とは別物とも言えそうだが、創意工夫を凝らしたメニューが続々と開発されているのは、それだけ日本食が海外で興味を持って受け入れられている証しでもあるのだろう。
同時に、私たちから見ると明らかに風変わりなこうしたメニューは、もしかすると現地の人々には「日本ではごくごく王道の和食」と勘違いされているかもしれない。そんな思いを馳せてみるのもまた楽しい。
筆者は先日、海外の友人から、日本では寿司にマンゴーソースやストロベリーソースをかけるかと訊ねられた。この友人は海外現地の高級な日本料理店でこうした巻き寿司を振る舞われ、それが日本の定番スタイルだと思っていたようだ。
明らかに不自然なコンビネーションであっても、高級な店で出されると、それが日本流なのだと納得してしまうものなのかもしれない。
本稿で気になる料理はあっただろうか。しばらく経てば、ためらわずに海外旅行に出ることができる日も近づくかもしれない。その際にはあえて現地の日本料理店に足を運び、大胆にアレンジされた和食に驚かされてみるのも楽しい経験となるだろう。