日本独自の漫画・アニメ文化はどのように生まれたのか。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「日本の漫画やアニメの大きな特徴は、子どもが主役だということ。戦後、子どもたちの中にあった『大人は信用できない』という気分が、日本独自の子ども文化を育む土壌となった」という。鈴木氏の半自伝的読書録『読書道楽』(筑摩書房)より、一部を再録して紹介しよう――。(聞き手・構成=柳橋閑)
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー
撮影=荒木経惟

戦後、少年たちが夢中になった『赤胴鈴之助』

――最初に読んだ本は何だったんですか?

【鈴木】はっきりとは思い出せないんだけど、やっぱり漫画だったんでしょうね。うちは親父が漫画好きで、ぼくに初めて買ってくれた本は、月刊少年漫画誌『少年画報』でした。そのなかでも、ぼくが最初に好きになった『赤胴鈴之助(※)は夢中で読んだ覚えがある。

自覚的に読んで、強い影響を受けた本というと、やっぱり『赤胴鈴之助』になるのかなあ。よく模写もしていたから、赤胴鈴之助の顔ならいまだに何も見ずに描けますよ。

――『赤胴鈴之助』は江戸時代の剣士の話ですよね。

【鈴木】江戸に千葉周作道場というのがあって、そこには錚々そうそうたる剣士たちが集っていて……なんていう剣豪ものの基本的な知識は、この漫画から手に入れたんです。

武内つなよし『赤胴鈴之助』(少年画報社クラシックス)
武内つなよし『赤胴鈴之助』(少年画報社クラシックス)

とにかく『赤胴鈴之助』は大人気で、貸本屋はもちろん、床屋さんとかにも必ず置いてあって、いろんなところで読んだ覚えがある。ドラマの主題歌なんかもよく覚えてますよね。

「剣をとっては 日本一に 夢は大きな 少年剣士 親はいないが 元気な笑顔 弱い人には 味方する」ってね。

 とにかくすごい人気だった。『少年画報』の連載があって、単行本が出て、ドラマになって、映画にもなった。全部観たいし、聴きたいんだけど、ぼくにできたのは『少年画報』の連載を読むことだけだったんです。あとは単行本を床屋さんで読むしかない。

あとから知るんですけど、ラジオドラマには、当時小学生だった吉永小百合が千葉さゆりの役で出演してるんですよね。

*『赤胴鈴之助』。1954〜60年、『少年画報』に連載。作者は福井英一(第1話)、武内つなよし(第2話以降)。57〜59年にラジオドラマ、テレビドラマが放送された。