自由にスポーツできる空間を確保しろ!

現在行われているサッカーのワールドカップで、王国・ブラジルはベスト8を前に敗れ去った。この敗北はブラジル国内の環境が変化したことに影響があるとの指摘がある。

かつてのブラジルは、整備されていないデコボコな空き地で、布をぐるぐる巻きにした球を蹴る少年たちであふれていた。特殊な環境で独自のテクニックを養い、まずは地元のクラブと契約して、徐々にビッグクラブへ移っていく。それが典型的なサクセスストーリーだった。

しかし、30年ほど前から建築ラッシュが始まり、空き地が激減。子供たちが自由にボールを蹴る場所が減った。ネイマール以降、絶対的なスター選手が出ていないのは、そんな理由もあるかもしれない。

東京など多くの地域では小学校の部活動がなく(※愛知県など一部の地域では小学生の部活動があったが、現在は民間委託による活動に移行しつつある)、公園でスポーツできる場所も少ない。こんな環境では、子供たちの体力低下が避けられないのは明らかだ。

スポーツ庁の「体力・運動能力調査」によると、30年前と比べて、体格(身長・体重など)は大きくなっているが、体力・運動能力はほとんどの数値が下まわっている。特に現在の子供は、「走る」「ジャンプする」「投げる」といった運動が苦手なようだ。

スポーツには「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期がある。5~12歳の頃にさまざまな動作を経験することで、脳が刺激され、運動神経が発達していく。従来なら、公園で遊ぶことで、自然と身に付いた“能力”が、特別なものになりつつある。

公園の鉄棒にひとりで座っている少女
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

一方でサッカー、野球、スイミング、ダンスなどスポーツ教室に通っている子供は少なくない。ブラジルのサッカーではないが、かつては誰もが経験できたスポーツが身近なものではなくなってきている。お金を払わないとスポーツができない時代になり、今後はスポーツ格差が顕著になるだろう。

子供の頃、公園でした野球やサッカーは楽しくて仕方なかった。同級生の多くがスポーツ選手になる夢を抱いていた。だから、公園でポータブルゲーム機で遊んでいる子供たちを見ると、少し悲しい気持ちになる。仲間内で楽しんでいるのだろうが、せっかくだからもっと体を動かして、と言いたくなる。ひょっとすると、野球やサッカーが禁止だから、ゲームのほうがいいや。そんな意識があるのかもしれない。

10年、20年後に日本人の運動能力が今以上に低下し、五輪などでスポーツ弱小国のレッテルを貼られる悲劇を生まないためにも、今、行政機関を含む大人たちが、コミュニティ内でしっかり話し合い、子供たちが遠慮なく自由に遊べる空間を作らないといけないのではないだろうか。

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