広さおよそ1400平方メートルの青木島遊園地を2023年3月末で閉鎖すると長野市が決定したことが波紋を広げている。スポーツライターの酒井政人さんは「施設を管理する側がクレームを受け、画一的に禁止・閉鎖という判断をしてしまう事例が全国にある。危惧するのは、自由に遊びやスポーツができない子供の運動能力が今以上に落ちてしまうことです」という――。
青空と遊具
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「公園閉鎖」問題に見る、もうひとつの重大な懸念

長野市にある青木島遊園地の閉鎖をめぐり、テレビのワイドショー番組やネット上でさまざまな意見が飛び交っている。

きっかけは「子供の声がうるさい」という苦情だった。しかも、たった住民1軒からの声で子供たちの遊び場が失われたことになる。「週刊ポスト」によれば、苦情を訴えたのは公園付近に住む大学名誉教授の男性で、市は男性に忖度そんたくしたのではないかと報じている。

子供の声の大きさをどう受け止めるかは個人差もあり、苦情を訴えた側にも事情があるようなので、一筋縄ではいかない問題だが、今回は公園=スポーツ施設という観点から考えてみたい。

青木島遊園地は2004年、住民の要望で設置された。住宅街にあり、スプリング遊具と鉄棒、ベンチがあり、広場がメインの小さな公園だ。児童センター、保育園、小学校が近隣にあり、子供たちにとっては絶好の遊び場所だったようだ。毎日、40~50人の子供が来ていたという。

今回、一部住民の意向に沿う形をとった長野市に対して当然、苦情が殺到した(※児童センターが決まった時間に外に出て拡声器を使っていたことに対するクレームだという報道もある)。地元メディアによると、「なぜ閉鎖するのか」「残してほしい」「1人の意見で決めていいのか」という声が多かったものの、市が閉鎖への経緯について説明すると納得したのだという。やけに物分かりがいい。そう感じる読者は多いのではないか。

公園は何をする場所なのか?

筆者は、都内の小さな公園の前にあるマンションに住んでいる。公園には、朝は犬の散歩をする人、日中は近隣の幼稚園児、昼にはランチをとるサラリーマン、夕方には小学生という具合に、大勢が訪れている。特に土日は幼児と小学生で大混雑。子供たちの遊ぶ様子を見守る親の姿も少なくない。

筆者はフリーランスのため、自宅で仕事をすることが多い。子供特有の嬌声や大声など正直に言えば「うるさい」と感じることもあるが、そもそも公園は、市民が思い思いの時間を過ごすことができるように設置された空間だ。どうしても気になるなら、耳栓をすればいいと考えている。

念のため、長男が持っている小学国語辞典で「公園」を調べると、「だれでも自由に遊んだり休んだりできる、広い庭」と書いてあった。

もちろん近隣の迷惑になるような行為は慎まなくてはいけない。夜中に酔っ払いが叫んでいるならともかく、日中に子供たちがはしゃぐ声は、むしろ平和を感じさせるものではないだろうか。