精神的な余裕がなくなる時もある
それは、自分の正直な気持ちでもあるのです。これまでは、ぐっとこらえてきた本音です。今回、うっかり漏れてしまった背景には、精神的な余裕がなくなってしまっているという事情があります。
患者さんもつらいけれど、サポートするご家族も追い詰められているのだということをお互いに共有し、話し合う時間を持ついい機会かもしれません。人間、いつでもどこでも優しくいられるわけではないし、すでに責めてしまったのですから、今後もまたうっかり責めてしまう日がこないとも限りません。
だから、自分にもイライラして感情がコントロールできないくらい余裕がないときもあると、知っておいてもらうといいと思います。
「今回はつい言ってしまって申し訳なかったけれど、今度イライラしてしまったときは、ちょっと外に出て気持ちを切り替えるね」
「私が『疲れた』と早く寝てしまう日は、心に余裕がないのだと思って」
などと、今後同じような状況になったとき、自分がどう対処していくつもりなのかを、患者さんに事前に伝えておいてください。
一次避難場所には「トイレ」がおすすめ
もっとも、基本的には責めないに越したことはないわけです。患者さんを責める言葉を聞かせないほうが、やっぱりいいのです。
もう今にも文句を言ってやりたくなっているなら、たとえばトイレにちょっとこもってみるのはどうでしょう。
家から飛び出せるなら、そうしましょう。ただ、身だしなみを整えたり、荷物を準備したり、戸締まりしたりと、出るまでにある程度の時間はかかります。そんな余裕もないくらい切羽詰まっているなら、身近にあって確実に一人になれるトイレがおすすめです。
トイレには、何でもいいので家族の記念品を置いておきましょう。結婚写真とか、子どもの七五三のお祝いに撮影した家族写真、みんなで旅行へ行ったときのお土産ものなどを置いておきます。家族の絆を象徴するものや、幸せに溢れていたときを思い出すアイテムがいいと思います。
イライラマックスの気分が少しだけクールダウンできるような、患者さんとのつながりを思い出せる何かを選んで置いてください。100をゼロにする必要はありません。本音を飲み込めるくらいの余裕が戻ってくれば十分です。
実際にトイレに逃げ込むような場面になったとき、思いのほか、クールダウン効果を実感してもらえるはずです。