日本流の奥ゆかしさはトラブルのもと

携帯メールの感覚で、「親しみを込めて書くのがメール」だと勘違いしている若い人もいるようだが、あくまでビジネスであることを忘れてはいけない。

日本語の場合は、「お世話になっております」「よろしくお願いいたします」といった形式的なあいさつは、やはりあったほうがいいと、平野さんはアドバイスする。「必要に応じて、あいさつや追伸に気持ちを込めた一文を添える。そうすれば相手との距離も縮まります」。

読み手によって解釈が異なる「あいまいな表現」を避けて「具体的に書く」ことも英文流のポイントのひとつだ。

トラブルの元凶になりやすい期日の指定には、特に注意を払いたいもの。「できるだけ早く」「数日後に」ではなく、「7月24日の午前9時までに」と、ピンポイントで指定するのだ。

奥ゆかしさもビジネスメールには無用。「可能でしたら……」などと書いてしまうと、受け取った側に「無理だから、じゃあ検討するのはやめよう」と解釈され、話が前に進まないことも考えられる。

その点、英語では、ひとつひとつの単語の意味が狭いため、誤解を招きにくいと、関谷さんは言う。

「日本語の『わかりました』だと解釈に幅がありますが、『understand』の意味は厳密。『understand, but disagree(理解しましたが、同意はしません)』ということにもなるんです。英語に比べ、日本語にはあいまいな表現が多いので、誤解を生むような言い回しは意識して避けるべき。たとえば『少し難しいように思いますが……』と書いた場合、まったくダメなのか、多少無理をすれば可能なのか、はっきりしませんからね」

また「具体的に書く」という英文メールのテクニックは、相手をほめるときやお礼を言うときにも効力を発揮する。

「先日は、まことにありがとうございました」といったありきたりの言葉ではなく、「○○の案件では、迅速な対応をしていただき、プロジェクトチーム一同、感激しております」と、具体的に感謝する(ほめる)。そのほうが、相手の心にググッと響くのだ。「直接会話するときも欧米人は相手の長所を見つけて上手にほめるものですが、メールでも同じこと。短くても、具体的なほめ言葉のほうが相手には伝わると思います」(関谷英里子さん)