アメリカ人の上司になぜ叱責されたか

「本来ビジネス文書とは一定のスタイルに倣って書くものです。要点が簡潔に伝わらないメールを出すと、英語圏では『教養がない』とみなされますが、日本では『仕方がない』となる(笑)。普通、ビジネスメールの書き方なんて習いませんからね」

そう話す松崎さんにも、苦い経験があるという。南カリフォルニア大学を卒業後、アメリカの会社に就職したとき、上司から「君はビジネス文書の書き方を知らない」と、ひどく叱られたのだ。

「『君は英語が書けないのか? 友達に手紙を書いているわけじゃないんだぞ!』と。最初は言われたことがピンとこなくて……。上司に言われて買ったテキストを読んで、叱られた理由がはじめてわかった。とても感謝しています」

英語は、国際ビジネスにおける事実上の“標準語”である。とりわけ、英文のビジネスメールは、世界共通のコミュニケーション・ツールとして、さらにその機能を進化させている。簡略でも相手に失礼な印象は与えない。しかも用件は確実に伝わる。それが、最大の特徴といえるだろう。

「さまざまな文化的背景を持つ人でも理解し合えるよう、最近はますます簡略化されてきたように感じます。パッと見てすぐに内容が理解できるので、忙しいビジネスパーソンにはありがたい。それに比べて日本語のビジネスメールは、ちょっと丁寧すぎるかもしれませんね」

アル・ゴア米国元副大統領ら要人の同時通訳も務める、通訳・翻訳者の関谷英里子さんは語る。

※すべて雑誌掲載当時


 

経営コンサルタント 松崎久純

1967年生まれ。米国南カリフォルニア大学卒、名古屋大学大学院修了。米国の通信機器販売会社などを経て、経済産業省所管・中部産業連盟経営コンサルタントを務め、慶應義塾大学でも教鞭を執る。

同時通訳者 関谷英里子

慶應義塾大学卒。商社などを経て、アル・ゴア元米国副大統領やダライ・ラマ14世など、世界の一流講演家の同時通訳者および翻訳者として活躍する。著書に『ビジネスパーソンの英単語帳』など。

(澁谷高晴、永井 浩=撮影)