日本の浄水技術は格段に向上した

さて「浄水技術が向上したからどこで採水してもおいしくなった」のであれば「浄水器でいいんじゃないか?」と思うかもしれません。実はその通りです。

浄水場の浄水技術も天然水の製造技術同様に向上してきた結果、東京都の水道水は以前とは比べものにならないくらいおいしくなってきました。天然水との違いは殺菌にカルキを使っている点です。それで塩素の味がしたり、わずかな有機物と反応してトリハロメタンなど有毒物質ができたりします。さらには途中の古い水道管で異物が混入する場合があります。

それらの不純物を取り去るのが浄水器ですが、蛇口に取り付ける簡易なタイプでもそれらの不純物の大半は取り除けます。さらにビルトインタイプの高性能浄水器なら天然水と変わらない水質の水を取り出すことができます。これらの浄水器の大型のものをスーパーに設置してその場でペットボトルに詰めるサービスも人気です。

実は市販されている一見天然水に見えるボトル入りの水のうち、アメリカから輸入したものには日本の基準に沿って原材料に水道水ないしは公共水源と明記されたものがあります。アメリカでPurified Waterに分類されるボトルウォーターは基本的には良質な水源で採水された水道水を工場で浄化したものなのです。

水道水をそのまま飲む人は半数もいない

さて、ここまでの情報を基に、なぜビックカメラがウォーターサーバービジネスへの参入を「有望だ」と考えているのか、考察をまとめてみましょう。

まず内閣府の世論調査からわかることは、水道水をそのまま飲む人が過半数を割っているということです。水道水がおいしい日本なのに、もっとおいしい水を飲みたい人口が無視できない数になってきているのです。

水道水をそのまま飲まない層の勢力分布は、家庭用の浄水器派とミネラルウォーター派が同じくらい。ミネラルウォーター派は日本人全体の約3割なのです。

あくまで私見ですが、私はこの3割という数字は首都圏の集合住宅に住む人の比率に近いと思っています。浄水場で飲むとあれだけおいしい水道水でも、集合住宅の貯水槽にいったん貯水されると、どうしても貯水槽に沈殿した不純物が混じってしまうのです。

そしてこれから先、都市部で集合住宅に住み替える人の多くが高齢者になっていきます。戸建てを好んでいた日本人も、年を取るにつれ2階建ての家は暮らしづらく、駅近のマンションへと住み替える傾向が生まれています。そうなると戸建てのときほど水がおいしくないことに気づくわけです。実際、ミネラルウォーターは都心の方が売れる傾向があります。