「スペア」が持つ意味

それにしても、このタイトルはかなり挑発的ではないだろうか。公開された本の表紙には、ヘンリー王子の大きな顔写真の下に、まるで自分はスペアにすぎないと強調するかのように「Spare」という文字が並ぶ。

“The heir and the spare”、「継承者(heirエア)とそのスペア/予備(spareスペア)」という表現は、世継ぎと、その世継ぎに何かあった場合のための予備、といった意味の表現で、イギリス王室のメンバーに対してもよく使われてきた。例えば、妹のマーガレット王女は姉エリザベス女王の「スペア」、弟アンドルー王子は兄チャールズ現国王の「スペア」、そして、弟のヘンリー王子は兄ウィリアム王子の「スペア」というふうにだ。ただこれは、ロイヤルファミリー自らが公に使う類いの言葉ではない。

もし、天皇の弟であり、皇位継承順位第1位の秋篠宮皇嗣殿下がご自分のことを「予備」と呼んだらどうだろうか。生まれた時から第1子と第2子では、皇室における役割が異なる。しかし、たとえそうした役割が生きている間ずっと変わらないとしても、「予備」という言葉には、自虐的で、何かやるせないものを感じてしまう。

「一線を越えたことを象徴するタイトル」

「この言葉は、君主制の中心には、生まれた順番によって『エア(継承者)』と『スペア(予備)』が決まるという、頑強な序列があることを思い出させます。世襲で特権や優位性が決まるという仕組みは、廃止されないかぎり近代化しません」とアメリカのライフスタイル誌タウン&カントリー(Town & Country)で書いているのは、英国王室ジャーナリストのビクトリア・マーフィー氏だ。「だから、ヘンリー王子がこれほど堂々とこの言葉を受け入れたということは、彼が一線を越えて、ほかの王室メンバーが決して踏み入れない場所に踏み込んだことを象徴しているように見えるのです」

ユニオンジャックが日ごろから掲げられている「ザ・マル」
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