物価高は来年春先にピークを迎えるか
アベノミクスは、積極的な金融緩和と機動的な財政支出によって先行きの期待を高めたが、労働市場などの改革に踏み込むことはできなかった。賃金上昇のためには、リカレント教育の強化、解雇規制の緩和などによる労働市場の流動性向上、企業支援など数多くの改革を政府が進めなければならない。ただ、岸田政権の政策運営を見ていると、そうした積年の課題となってきた改革が進む兆しが見えない。
また、わが国企業は新しい発想によって、高付加価値の商品を創出することが難しくなっている。わが国企業は世界のデジタル革命に遅れた。自動車産業は世界的なEVシフトに直面している。世界の消費者が欲しいと思う新商品を開発できない状況が続けば、経済の実力である潜在成長率は高まりづらい。それも賃金が伸び悩む要因の一つだ。さらに、年功序列、終身雇用制度の継続など、わが国経済全体でより効率的な付加価値の創出をはばむ要因は多い。
現在の価格転嫁の状況と原材料価格の高騰などを踏まえると、わが国の物価は来年春先あたりにピークをつけると予想される。その後も、過去に比べて物価は高水準で推移しそうだ。人々の実感として生活の苦しさが増す展開が懸念される。それぞれの家計は、身を守ることを優先に考える必要がありそうだ。