値上げした食料品は7000品近くにも

足元で、わが国の物価上昇になかなか歯止めがかからない。10月、消費者物価指数(CPI)の総合指数は前年同月比では3.7%上昇した。生鮮食品を除く総合指数は同3.6%、生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数は同2.5%の上昇だった。また、帝国データバンクの発表によると10月、主要飲食料品メーカー105社は6699品もの値上げを行った。

当面、値上げの勢いは止まりそうにない。わが国の企業は、川上の原材料価格などの上昇分を販売価格に転嫁する動きを続けるとみられ、消費者物価の上昇は続きそうだ。それに加えて、ウクライナ紛争やそれに関連するロシアの情勢を見ると、エネルギー資源や食料など供給不安の解消には時間がかかるだろう。それは、最終的に国内の消費者物価に追加的な押し上げ圧力がかかる。一方、わが国の賃金は伸び悩んでいる。これまで以上に家計の生活負担が高まることが想定される。

参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=2022年11月30日午前、国会内
写真=時事通信フォト
参院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=2022年11月30日午前、国会内

生鮮以外の食料と光熱費の値上げが大きい

2021年9月以降、わが国の消費者物価指数の上昇ペースが速まっている。2022年11月中旬、東京都区部のCPI総合指数の上昇率は同3.8%に達した。生鮮食品を除く総合指数は3.6%上昇した(いずれも速報値)。総合指数でみると、1982年4月の4.2%以来の物価上昇である。

品目別にみると、生鮮食品を除く食料や光熱・水道費の値上がりが大きい。家賃や住居設備の修繕・維持費も上昇している。また、11月以降は鳥インフルエンザの発生によって卵の価格が急速に上昇している。

世界的にみても、中国を除く多くの国と地域で物価は上昇している。米国では物価上昇は今年年央あたりにピークをつけた兆しは出ているものの、物価の水準は依然として高い。天然ガスなど、エネルギー資源の確保に苦心するユーロ圏の物価上昇はより深刻だ。世界の物価環境は低位安定から、かなり不安定な状況に移行したと考えられる。