最も安いグレードは約64万円

「宏光MINI EV」には3つのグレードがある。モーターは全てのグレードで共通の20kW(27.2馬力)。最高速度は100km/hだから高速道路も走れる。

バッテリーサイズは9.3kWh。航続距離はNEDC(新欧州ドライビングサイクル基準)に近い中国基準で120km(EPA基準換算で約90km:筆者推定)。

最も安いグレードは中国では3万2800元で売られている。11月16日時点のレート(1元=19.75円)で計算すると、日本円で64万7800円という低価格だ。

テスラ「モデルY」
筆者撮影
テスラ「モデルY」

中間グレードだと、バッテリー容量と航続距離は同じだが価格は3万8800元(同76万6300円)。エアコンが装備される上級グレードは4万4800元(同88万4800円)、バッテリー容量は13.8kWn、航続距離は同170km(同128km)だ。

テスラに次ぐ世界3位の販売台数

筆者は、発売当初からこの車に注目し、拙著『日本車敗北』(プレジデント社)第2章でも「50万円を切るEV」として紹介している。

「宏光MINI EV」の2022年1〜9月の販売台数は、CleanTechnicaのデータによると31万6000台となっている。これはプラグイン車の世界3位という好成績だ。

ちなみに、同期間における1位はテスラ「モデルY」、2位は同「モデル3」だったが、中国市場だけでみると「宏光MINI EV」が堂々の1位を占めている。

「宏光MINI EV」の価格は、円の下落により円換算では3割以上高くなってしまった。そのため、「50万円を切る」とまではいかないのが現状だが、最上位グレードでも80万円台というのはEVとしては驚くべき安さだ。

なぜ「宏光MINI EV」はこれほど低価格で販売できるのかというと、設計を徹底的に簡素化しているほか、電子部品に汎用品を使用していることが貢献している。

また急速充電には未対応なので、それも低価格の一因だろう。