休業者が異常に増加したのは「雇用調整助成金」の影響

休業者が異常に増加した基本的な原因は、コロナ禍において、雇用調整助成金によって特例措置が講じられたからだ。雇用調整助成金とは、休業手当を助成する制度である。休業中の従業員に対して休業手当を支払った場合の助成率は、従来は80%程度だった。それが、コロナ対策の特例措置として、中小企業についてはほぼ100%に引き上げられた。

また、1人1日当たりの助成金の上限額は、従来は8370円だったが、これを1万5000円に引き上げた。さらに、パートやアルバイトなどの短時間労働者も対象にした。大雑把にいえば、特例によって支給額がほぼ倍になったのだ。休業者に対してきわめて手厚い保護が与えられたことになる。

日本では、解雇することが簡単にはできない。だから、これだけの支援が受けられるのなら、雇用側としては、解雇せずに休業手当を払い、雇用調整助成金を申請するだろう。従業員の立場から見ても、失業手当(離職前の給与の5~8割)よりは多額の支給額を受け取れる。こうして、休業者のほとんどが雇用調整助成金で支えられることになった。

2020年に特例措置が導入されたとき、これは一時的な措置だとされた。しかし、その後、何度も延長措置がとられた。22年6月末日を期限とされていたのだが、そのままの形で、22年7~9月の期間についても延長されることとなった。

リーマンショック時を大幅に上回る助成金が支給された

当初は、新型コロナウイルスの影響は一時的なものにとどまると考えられていたため、寛大な特例措置が安易に導入され、そこから抜け出せなくなったということだろう。

22年6月10日時点における雇用調整助成金等(緊急雇用安定助成金も含む)の支給決定件数は約659万件、支給決定額は約5.8兆円となっている。これは、リーマンショック時の実績(09年度6538億円、10年度3249億円)を大幅に上回る。雇用調整助成金のもともとの制度では、企業が拠出した保険料収入が財源だ。コロナ前には、財源である雇用安定資金の残高が1.5兆円あった。雇用保険全体で約6兆円あった。

世界的な流行と経済的影響
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しかし、特例措置によって申請数と支給額が想定以上に増加した。そして、当初は一時的とされた特例措置がずるずると延長された結果、支給総額が巨額になり、財源が枯渇した。一般財源の投入もなされた。雇用保険は労使が負担する保険料の他、国の一般会計から支出する国庫負担などで賄われる。22年度の保険料率は、労働者が賃金総額の0.3%、事業主が0.6%だ。本来は労働者が0.6%、事業主が0.95%だが、積立金が一定水準を超えていたことなどから、料率を引き下げている。

しかし、雇用調整助成金の支給増で積立金が底をついたため、料率引き上げが避けられなくなった。23年度の料率を労働者0.5%、事業主0.85%とすることが予定されている。