世界のどこの映画祭に行っても観客の反応は変わらない
「もうね、風前の灯火(笑)。ただ、息をしているだけって感じです」と笑うも、「でも、お顔の色艶もよくて」と返した。「化粧してないからね」と彼女は再び笑った。
ただ、当時のインタビューを改めて読み返すと、彼女の言葉の節々には人生の終活に向けて、どこか達観したようなセリフが点在していることに気づく。
世界中の国際映画祭に出席されて、国によって観客の反応の違いを聞いた際も、「違いはないですね。みーんな同じ。人間は国や社会の仕組みが違っても、結局、根本的に感じるところは同じなんだなって確信しました。それがわかっただけでも、行ってよかったなと思います」
日本人は精神的な意味で世界を牽引していくべき
ニューヨークという街の印象と、ここで暮らす日本人にメッセージをいただいた際も、
「すごい都会で、アスファルトジャングルって印象ね。日本から来て、ここで生きようとする人の強さは私には想像つかないくらいすごいと思うんです。本当にタフだなぁって。でも、だからこそ、その人たちには日本のよさを世界に伝えてほしい。これからの世界で、日本人が果たさなきゃいけない役目ってあると思うんですね。精神的な意味で、世界を牽引していくべきじゃないかなって。なので、この国で暮らしても日本のよさを忘れないでほしい、伝えてほしい……私はもう伝えることができるわけじゃないからね……でも、それにしても……」
「それにしても……?」
「みんなタフですね。ニューヨークにいる人は(にっこり)」
はからずも、僕は、生前の彼女の言葉を収録した最後のインタビュアーになった。
希林さんとのインタビューの思い出は、僕の宝物。お会いできてお話を聞けて僕は幸せだった。