スマホ需要もサブスクビジネスも行き詰まっている
また、世界的な物価の高止まりも深刻だ。コロナ禍の発生、ウクライナ危機の発生などによって世界経済は脱グローバル化した。世界全体で供給は不足し、インフレが進行しやすくなった。それは一時的な変化ではなく、構造的な変化と考えられる。その状況下、世界経済全体で需要も飽和し始めた。
象徴的なのが、スマホ需要の減少だ。7月~9月期まで、5四半期連続で世界のスマホ出荷は減少した。韓国サムスン電子、中国のシャオミ、オッポ、ビボの出荷台数減少は鮮明だ。スマホはSNSやネット通販、フィンテックなど新しいサービスの創造に大きく寄与した。さらに、米中のIT先端企業は獲得したビッグデータを分析して、シェアリングやサブスクリプションなど新しいビジネスモデルを確立した。そうした需要が飽和している。
競争激化や連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めもあり、IT先端分野を中心に企業収益の増加ペースは鈍化している。ここから先、企業が成長を実現するためには、自ら新しい需要を創出できるか否かが大きく影響するだろう。
ソニーとホンダの実力が問われている
見方を変えれば、ソニーとホンダの実力がこれまでに増して問われている。そのカギを握るのが半導体だ。足許、ロジックとメモリ半導体の需要は減少している。しかし、やや長めの目線で考えると、世界のあらゆる分野で、より多くの半導体が必要になるだろう。中長期的な世界経済の展開は、半導体に大きく影響されるといっても過言ではない。
まず、ソニーは世界のスマホ需要の拡大についていくことが難しかった。しかし、ソニーは培ったモノづくりの力を発揮して、画像処理半導体の一つであるCMOSイメージセンサ市場で世界トップシェアを手に入れた。半導体事業の成長は、ソニーのゲーム事業の強化にも貢献した。ただし、米国の金融引き締め強化や中国経済の成長率低下によって、ゲーム事業の先行きは不透明だ。足許の業績拡大ペースを維持できるかは見通しづらい。
一方、自動車分野では“CASE”の取り組み加速などを背景に、ソニーの半導体製造技術が発揮できる分野が増えている。そうした変化に対応し、新しい収益源を確立するために、自動車の軽量化、さらには航空機などモビリティー製造技術に強みを持つホンダとの連携強化が選択された。