日本経済復活の大きな起爆剤となるか

ソニーグループとホンダが折半出資する「ソニー・ホンダモビリティ」は、ここへきて、急速に電気自動車(EV)事業の運営体制を強化している。目的は、ビジネスモデルの変革を加速し、新しい収益の柱を確立することだ。ソニーとホンダは製造技術に磨きをかけてウォークマンやCVCCエンジンなど新しい最終商品を生み出して成長した。そうしたヒット商品の創造は、わが国経済の成長に大きく貢献した。

電気自動車(EV)新会社「ソニー・ホンダモビリティ株式会社」の設立発表会で説明する川西泉社長
写真=時事通信フォト
電気自動車(EV)新会社「ソニー・ホンダモビリティ株式会社」の設立発表会で説明する川西泉社長=2022年10月13日、東京都港区

ソニー・ホンダモビリティを俯瞰すると、新しいヒット商品を実現できるか否かが、中長期的な企業、さらには経済の成長に大きく影響するだろう。特に、各国の雇用と所得創出を支えたスマホ需要が減少している。米国の利上げや、中国経済の成長率低下によって、世界が景気後退に向かう可能性も高まっている。

他方で、半導体が世界経済に与えるインパクトはさらに増すものとみられる。事業環境の厳しさが増す中、両社は海外企業との連携を強化し、競合他社を上回るスピードで新しい最終製品を生み出そうとしている。それは、1990年代以降、経済成長率が停滞気味に推移したわが国にとって、大きな起爆剤となる可能性を秘めている。

「100年に一度の変革期」に対応するため

連携強化によってソニーとホンダは、互いの弱みを補完し、早期に新しい収益源を確立しようとしている。ソニーにとってホンダは、自動車という新しい領域に踏み込むために欠かせない。一方、世界の自動車産業は100年に一度と呼ばれる変革期を迎えた、例えば、EVシフトの加速によって自動車の生産は“すり合わせ技術”を基礎にしたものから、デジタル家電のような“ユニット組み立て型”に移行する。ホンダにとってソニーのデジタル技術などの吸収は喫緊の課題といえる。

両者の連携強化はかなり急ピッチに進んでいる。その背景には、世界経済の急激な環境変化がある。まず、中長期的に世界経済のデジタル化は加速するだろう。自動車にはより多くのデジタル技術が実装される。そのため、世界の大手自動車メーカーがIT先端企業との関係を強化している。対応が遅れた企業は変化に取り残される恐れが増す。世界全体で異常気象問題も深刻だ。脱炭素のために自動車のEVシフトは加速するだろう。