すべてのことに原価意識を持って仕事を

つまり、仕事をする以上すべてのことに原価意識を持って仕事をしなさいという意味で、採算意識と言っているわけです。採算、または採算を合わせると言えば、利益を得るということにつながっていくように思いますが、利益を求めてすべてのことを考えていくのではありません。「原価を考える」ということです。ここに集まっておられるみなさんもそうだと思いますが、仕事をしていきます中で、コスト、原価はどうなっているのかということを考えていない人は、経営がうまくいっていないと思います。

私はいつも思うのですが、例えばホテルのレストランで食事をしているとします。レストランは閑散としていて、たくさんのウエイトレスさん、ウエイターさんが手持ちぶさたに、あちらの隅、こちらの隅に立っておられる。見渡せば、お客さんは1000円か1500円ぐらいのライスカレーみたいなものを食べておられる。そういうときはいつも、立っているウエイターさん、ウエイトレスさんの人件費などを考えて、パッパッと頭の中で計算して、「ああ、これじゃ採算は合わないな」と思ってしまうのです。

つまり、自分のやっている仕事はもとより、いろいろ遭遇する所々で、それを、瞬間的に原価意識を持って見ることができるのか、漠然と見てしまうのか。それによってたいへんな違いがあります。経営者である人は、それを漠然と見ていたのでは駄目なのです。自分の仕事だけではなしに、なんにでも原価を考えなければならないわけです。

新入社員の給料

これは私自身がもともと持っていたものなのか、どうしてそういう意識を持つようになったのかはわかりませんが、例えば会社の中である仕事を秘書に頼んだとします。それが非常に遅くて、持ってくるのに時間がかかる。わずか1枚にまとめたものをワープロやパソコンで打ち出して持ってくるだけなのに、半日もかかっている。最近は大卒の初任給でも20万円はします。おそらく中小企業の場合でも、残業代を含めて平均30万円ぐらいかかっているだろうと思います。ボーナスまで入れれば40万円はくだらないだろうと思います。

そうすれば年間480万円、年俸は約500万円となります。そして、ひと月に20日間ぐらいしか働きませんから、1日当たりは2万円となり、それを8時間で割れば1時間2500円になります。それをさらに10で割れば、6分250円になります。つまり、タクシーのメーターみたいに、6分経てば250円ずつ上がっていくわけです。そういう目で見れば、ウロウロしている人が目障りになってしようがない。250円があの辺をウロウロ、この辺をウロウロ、何もしないで手ぶらでウロウロしている。もうたまらんような感じがします。