私が経営者だからそう思うのですけれども、従業員の人たちにも「あなたの給料からいけば6分間250円なのですよ。だから、たった6分間でも、それ以上の価値を生み出してくれない限り、会社は赤字になるのですよ」と教えてあげて、そういう意識を持った従業員の人たちが動いてくれるようにする。もちろん、その人たちはいつも6分250円で詰めて働いているわけではありませんが、例えば1時間のロスをしたので、次の1時間を2500円以上の5000円、いや1万円の仕事をしようと思っていくようになると思うのです。ただボーッとしていても、それだけ時間がかかる。1日2万円かかってしまうわけです。

オフィス
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ですから、「あなたは午前中、ボーッとしていたでしょう、だからあなたは1万円を無駄にしたのですよ」ということになるのですが、それを経営者が言えば非常にきつく感じます。ですが、従業員の人たちがみんな、自分で「今日はまずかったなあ。考えてみれば、今日は午前中、ボーッとしていた。会社に1万円損をかけてしまった」と思ってくれるような意識になってくれれば、会社は非常にうまくいきます。

利益をいくら出せということではないのです。自分がここに座っている、喋っている時間は、どのくらいの価値をつくらなければならないのか、どれだけのコストがかかっているのかということを意識するために、全従業員に採算意識を持ってもらいたいわけです。

ビジネスチャンスは非常に広がってくる

中小企業の経営をやっていますと、経営者だけがそういうマインド、意識を持っているものですから、従業員のやることが見ていられないと言いますか、イライラして当たり散らして怒り散らす。ますます逆作用となって、ちっともいい方向にいかないのですが、従業員も同じような立場で、同じような意識を持ってくれれば、「そんなことをしていたのでは採算が合わんじゃないか」と言っただけで、「あっ、そうですな」とわかってくれます。常に原価意識を持ってくれれば、何も当たり散らさなくてもいいわけです。

それは会社の中の仕事だけではなくて、ホテルのレストランに入った場合でも、ラーメン屋さんに入った場合でも何を見ても、この商売はうまくいっているのか、うまくいっていないのかという目で見るようにしなければなりません。そういう目で見ていますと、次に自分が事業をしようとする場合に、ああいうビジネスはいけそうだな、ちょっと目の子で計算(概算)してみても、十分に採算が合いそうだなということがわかってきます。あるいは、ああいう事業は難しそうだな、誰がやっても難しいのではないかということもわかってきます。

遊んでいるときでも、仕事のときでも、常に採算意識を働かせて物事を見ていけば、ビジネスチャンスは非常に広がってくるのです。また、その採算意識を従業員に持ってもらうように、つまり原価意識を持ってもらうように、常に従業員に話をしてあげる。原価に対して非常に敏感な、鋭敏な従業員が何人いるかということが、会社の経営内容をよくしていくもとだろうと思います。