3国がそれぞれ相手に譲る姿勢を持たなければ
【東郷】かつて日本が戦争終結にあたって連合国からポツダム宣言を提示されたときも、大変な苦労がありました。日本は国体の護持、すなわち皇室の安泰が棄損されないことを条件にポツダム宣言を受諾すると連合国に伝えます。これに対して、連合国側は「日本国の最終的な政治形態は日本国国民の自由に表明する意思によって決定する」と回答しました。そこで日本は、日本国民が自由に意思表明をすれば必ず国体の護持を願うはずだと考え、ポツダム宣言受諾を決定したのです。
もしこのとき連合国が皇室の廃止を通告していたら、日本は戦争を継続していたと思います。アメリカもそれがわかっていたから、日本に対して譲歩し、日本が何とか受け入れられるような条件を提示したのです。
自分の主張を一〇〇%相手に飲ませようとするのは、外交ではありません。アメリカとウクライナ、そしてロシアがそれぞれ相手に譲る姿勢を持つことが必須です。
【中島】山本七平は『「空気」の研究』で、日本が無謀な戦争に突入した原因を「空気の支配」に見出しました。「戦争するのが当然だ」という空気がつくられた結果、いかに非合理的な決定がなされても、「それはおかしい」と口にすることができなくなってしまったのです。
現在のようにロシアを打ち負かすべきだという空気が支配的な中で、ロシアとの停戦交渉に乗り出すのは非常に大変です。しかし、これ以上犠牲を増やさないためにも、停戦が必要であることは間違いありません。私も友人や先輩との良好な関係を失う覚悟で、停戦を訴えていきたいと思います。