ウクライナの反ロ感情とネオコンの思惑が合致してしまった

【東郷】近年、ウクライナではヨーロッパと強い親和性を持ち、強烈なウクライナ愛国主義を掲げるグループが台頭しています。彼らは第二次世界大戦でナチスと協力し、ソ連と戦ったステパン・バンデラというウクライナの民族主義者を信奉しており、強い反ロ感情を持っています。

彼らにとって、バイデンやヌーランドのようにアメリカを絶対善と考え、ロシアを絶対悪と見なす人たちがアメリカ政府の中枢を占めるようになったことは幸運だったと思います。こうしてウクライナの反ロ感情とネオコンの思惑が見事に合致してしまったのです。

【中島】バイデンの態度はあまりにも頑なです。自分が一〇〇%正しく、プーチンが一〇〇%間違っていると考えているのでしょう。

ホワイトハウスとアメリカ国旗
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自分が絶対に正しいという姿勢は、フランス革命に通じるところがあります。フランス革命を主導した人たちは、理性は無謬であると考え、人間の理性によって完璧な世界をつくることができると信じていました。

これを厳しく批判したのが、保守思想の祖とされるイギリスのエドマンド・バークです。バークは人間の理性に対して懐疑的な眼差しを持っていました。人間は道徳的にも能力的にも不完全な存在です。どんなに頭のいい人でも間違えたり誤認したりします。人間が完璧な世の中をつくることなど不可能です。

「自分が100%正しい」という政治思想は破滅を産む

【中島】保守はこの懐疑の念を自分自身にも向けます。自分もまた間違えやすい人間だとするなら、自分と異なる意見を持った他者の話にも耳を傾けてみようということになる。そして、他者の話に理があれば、そこで合意形成をしていく。自己に対する懐疑が他者への寛容につながるのです。

極端で偏った考え方は、必ずフランス革命のような結果をもたらします。バイデンが現在のような対ロ政策を続けていれば、ウクライナはこれまで以上に悲惨な状況に陥る恐れがあります。

今回の戦争で私が本当にショックだったのは、私と同世代から少し上で、個人的にもよく知っている日本の国際政治学者たちが、バイデン政権の主張をオウム返しのように述べ続けていることです。彼らはアメリカの責任を指摘している人を見つけようものなら、「ロシアを擁護するつもりか」などとバッシングを浴びせています。完全にネオコンの論理にとらわれてしまっています。