巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎の戦いのよう

初登院の日、国会議事堂の正面玄関には、あなたの周りを取り囲む、ひときわ大きな人垣ができていたのを鮮明に覚えています。

そこには、フラッシュの閃光を浴びながら、インタビューに答えるあなたの姿がありました。

私には、その輝きがただ、まぶしく見えるばかりでした。

スポットライトを浴びる政界のプリンスと、辛酸をなめながらも、千葉の県議会議員から国会議員になりあがった男の対比。そこで感じただろう、チリチリとしたかすかな妬みが行間には垣間見える。

最も鮮烈な印象を残すのは、平成二十四年十一月十四日の党首討論でした。

私は、議員定数と議員歳費の削減を条件に、衆議院の解散期日を明言しました。

あなたの少し驚いたような表情。

その後の丁々発止。

それら一瞬一瞬を決して忘れることができません。

それらは、与党と野党第一党の党首同士が、互いの持てるものすべてを賭けた、火花散らす真剣勝負であったからです。

この演説が聞く人にスリルや興奮を覚えさせるのは、永遠のライバルの出会いから別れまでが、一つのストーリーとして美しく紡ぎ出されているからだ。それは、まるで、安倍氏の地元であった山口県の下関市にある巌流島で行われたと言われる、宮本武蔵と佐々木小次郎の歴史的な対決のようだ。

あなたは、いつの時も、手強い論敵でした。

いや、私にとっては、仇のような政敵でした。

攻守を代えて、第九十六代内閣総理大臣に返り咲いたあなたとの主戦場は、本会議場や予算委員会の第一委員室でした。

少しでも隙を見せれば、容赦なく切りつけられる。

張り詰めた緊張感。

激しくぶつかり合う言葉と言葉。

それは、一対一の「果たし合い」の場でした。

少年口論
写真=iStock.com/Tom Kelley Archive
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二人の剣豪のにらみ合い、緊張感、真剣勝負の様子が手に汗握るように伝わってくる。剣をペンに(言葉に)置き換え、戦いを生々しく描写する野田氏の筆致はまさに、手練れの剣客のものそのものだ。