予選会のセオリーを覆しての6位通過

箱根駅伝予選会は年々、留学生の参戦が増えている。昨季は伝統校といえる大東文化大と専修大が、今季は前回予選会14位の上武大、同15位の城西大、2018~2020年に僅差で落選した麗澤大などがケニア人留学生を初採用。5年前の予選会は9人だった留学生の出走は昨年が12人、今年は15人まで増加している。なお青学大が33年ぶりの箱根復帰を決めた2008年の予選会に留学生は出場していない。

ケニア人パワーは巨大だ。昨年は駿河台大が予選会を初めて突破。専大も2年連続出場を死守している。今年は大東大が4年ぶりの復帰をトップ通過で飾ると、城西大も3位で突破した。さらに麗澤大も前年の28位から14位まで急上昇している。その一方で、留学生のいない神奈川大と中央学大が“イス取りゲーム”からはじき出された。

中央学院大・川崎勇二監督は、「新たな大学がどんどんどん強化していますし、予選会の戦い方も変わってきているなと感じました」とこぼしていた。

今回、15人出走したケニア人選手が個人成績で上位7位を占めた。箱根予選会の突破には留学生の“貯金”が欠かせない状況になりつつあるだけに、日本人だけで55年ぶりの本戦出場を決めた立教大の価値は極めて高い。

上野監督は学生時代、ケニア人留学生と真っ向勝負を演じてきた。立教大に留学生はいないが、ケニア人留学生の存在を強く感じている。

「ケニア人留学生は各チームに良い存在意義をもたらしていると思うんですけど、立教大学はそこにフォーカスせず、一人ひとりの個の力。全体のチーム力で突破したんじゃないでしょうか。突出した選手がいませんので、チームトップのタイムだった國安(広人)を筆頭にチーム12番の後藤(謙昌)までしっかり走ってくれたことに感謝したいです」

給水所で水をとる選手の手元
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また箱根駅伝予選会は走力だけでなく、独自のテクニックが必要とされてきた部分がある。各校10~12人が一斉スタートするため、近年は「集団走」(チーム内で数人のグループを作り、集団でレースを進める)で“確実性”を高める戦略がスタンダードになっていた。今回もエースを欠いた日本体育大が見事な集団走を行い、75年連続出場を決めている。

一方、立教大は個々が自分たちの判断でハーフマラソンを駆け抜けた。留学生不在で、集団走もしない。近年の予選会突破セオリーを無視するかたちで、難関を突破したことになる。上野監督の“こだわり”が感じられる部分だろう。