「バーバパパのがっこう」生徒が自分で選べる公立中

草潤中が作られた背景には、岐阜市の不登校児童生徒の数が全国平均と比べて高かったこと、統廃合で廃校となった小学校の再利用について模索していたことがありました。

不登校特例校の設置が決まったことで、どんな学校にしていくのか、大学教授や小児科医、フリースクール、教育支援センターなどさまざまな立場の助言を受けるとともに、不登校を経験した通信制高校に通う高校生の声も参考に、そのグランドデザインを描いていったのです。

アドバイザーのひとり、京都大学総合博物館の塩瀬隆之准教授は、「理想はバーバパパのがっこう(※)」と言い、導き出されたのが、子供が学校に合わせるのではなく、子供主体の学校にしていく学校らしくない学校というコンセプトでした。

(※)A・チゾン/T・テイラー著、山下明生訳の絵本。勉強嫌いで学校も好きじゃない子供たちに、バーバファミリーが子供一人ひとりの好きなことや得意なことに合わせていろいろな学びを実現した理想的な学校をつくるお話。

例えば、担任も生徒が選ぶ、個別担任制を採用。生徒の希望を聞きながら、担当の先生を決めていき、2カ月に1回見直しもできます。

マネジメントオフィスという名前の校長室
マネジメントオフィスという名前の校長室はいつも解放されている。撮影=中曽根陽子

環境も、生徒の居心地の良さを重視。塗装や備品は“学校らしくない”デザインや明るくカラフルなものを選びました。常時解放されているマネジメントオフィスという名前の校長室には、ビビッドなオレンジのソファが置かれ、くつろぎにくる生徒の姿もあるそうです。

カーペット敷きの図書室には、キャンプに使うテントやハンモック、横になれるソファなど、学校らしからぬ備品がいろいろ置かれています。一人でも、友達と一緒でも、思い思いにくつろぎながら過ごすことができる場所が校内にいくつもあるのが印象的でした。

カーペット敷きの図書室
カーペット敷きの図書室、くつろぎながら過ごせる仕掛けが
撮影=中曽根陽子

海外の学校を視察に行くと、いつもそのカラフルさが印象に残り、日本の学校の建物の無機質な環境をなんとかできないのかと思っていたのですが、既存の学校でも、やろうと思えば、ここまで工夫ができるのだと感心しました。

開校当初の計画ではトイレ改修はありませんでしたが、開校前の不登校経験者のヒアリングでも最も要望が高く、「古く汚いトイレでは生徒が学校に来ない」と全体予算の3分の1強に当たる1100万円かけてきれいにしました。1階と3階のトイレは未改修のままなので、多くの生徒は2階のトイレを使うそうです。