一晩以上煮込んだスープを使用

福岡県発祥のロイヤルホストが「オニオングラタンスープ」を提供するようになったのは、1986(昭和61)年と聞いていたが、前年の1985年にはメニューにあった(当時480円)。いずれにせよ発売して40年近くたつ。その作り方も教えてもらった。

「福岡市にある直営のセントラルキッチン(CK)での仕込みから始まります。主な材料は牛バラのミンチ、香味野菜のタマネギやセロリ、ニンジンなど。夕方から仕込んで一晩煮込みます。調理作業では卵白も用います。灰汁あくを吸収してくれる効果もあるからです。このようにレストランでシェフが行う作業と同じやり方で仕込んでいます。ここで作られたコンソメスープにじっくり炒めたオニオンをあわせてパックにして冷凍し、各店舗に運ばれます」

CKでの仕込みの様子
画像提供=ロイヤルHD
CKでの仕込みの様子
画像提供=ロイヤルHD
CKでの仕込みの様子

以前、筆者も同社のCKを視察したことがあるが、巨大な寸胴鍋などが並び、スケール感も際立っていた。ここで作られた製品はパックにつめて冷凍して、各店舗に運ばれる。

「店舗ではパックを湯煎して、ご注文が入ってからキャセロール(厚手の鍋)に入れ、クルトンやチーズを入れてオーブンで焼きます。チーズはグリュイエールチーズを用いますが、この乗せ方も工夫しています」

こうして提供されるオニオングラタンスープにはご馳走感もあるのだろう。コロナ前に比べて「外食への特別感が増した」といわれるご時世、来店客がセットメニューで、他のスープに比べて価格は上がる同商品を選ぶ気持ちもわかる気がする。

ロイヤルフードサービスの生田直己社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
ロイヤルフードサービスの生田直己社長

サイドメニューではなく「主役」

実は、ロイヤルグループが初めて「オニオングラタンスープ」を提供したのは、1953年11月に福岡市で開業したフレンチレストラン「ロイヤル中洲本店」(現レストラン「花の木」。1989年に大濠公園内に移転)だ。この商品を有名にしたのは、1954年のことだった。

「MLB(大リーグ)ニューヨーク・ヤンキースのスターだったジョー・ディマジオ選手、映画スターのマリリン・モンロー夫妻が新婚旅行で来日。福岡も訪問し、ロイヤル中洲本店でディナーを楽しまれました。その時にマリリン・モンローさんは、ご提供したオニオングラタンスープがとても気に入られたそうです」

地元大手紙の西日本新聞が撮影した当時の写真には、モンローの手元にオニオングラタンスープがあるのがわかる。まだ多くの庶民には縁遠かったスープを、セレブがいち早く評価していたようだ。

メニューにはモンロー来店時の写真が使用されている
撮影=プレジデントオンライン編集部
メニューにはモンロー来店時の写真が使用されている

現在も「花の木」ではお店でコンソメスープをひいてオニオングラタンスープを作り、提供しているが、1971年に福岡県北九州市で1号店がオープンした「ロイヤルホスト」が1980年代に提供すると、多くの人が味わい、人気に火がついた。

ちなみに現在、店舗数が多いのは東京都(52店)、福岡県(26店)、大阪府(23店)、神奈川県(21店)の順になっている。そんな「ロイヤルホスト」にとって「オニオングラタンスープ」はどんな役割なのか?

「今や主役のような存在です。先日、ロイヤルホスト宝塚店で食事をしましたが、近くのテーブルのお客さまが、最初にオニオングラタンスープを頼まれ、それを中心に食事をされていました。芝居でいえば幕開けで、いきなり主役が出てくるような立場になっています」