SDGsの話題ににじむ「やらされている空気」
日本の20代・30代では、他の年齢層に比べて、環境意識の高い人が多いことは事実だ。だが同時に無関心な人の割合も他の年齢層と比べても最も高い。統計調査からは、遥かに高齢者のほうが気候変動の影響を危惧しており、若い人の関心が低いということもわかってきている(*3)。
推察だが、今の若者は、学校でSDGsを勉強するようになったことで、認知度は高いが、その半面、学校の課目として扱われることで「押し付けがましい」と感じる人が増えてきているのかもしれない。
反省すべき点は、大人のほうにあるのではないだろうか。どこかで誰かがSDGsの話をしたときに、言わされている空気を感じたことはないだろうか。誰かが襟元にSDGsバッジをつけているのを目にしたときに、やらされている空気を感じたことはないだろうか。若者にとって「見せかけのもの」は嫌悪の対象となるだろう。大人が本気で問題をとらえなければ、若者から冷めた目で見られても仕方がないだろう。
「俺たちの世代はだめだ。だけど若者の世代は意識が高いので期待しよう」では、やはりだめなのだ。誰か別の人に問題を委ねても、事はうまくは運ばない。
どの政府を選ぶかは有権者にかかっている
有権者としての立場でも同じだ。選挙で短期的なメリットを謳う政治家を応援していたら、当然、政治家も短期的な結果ばかりを追求するようになってしまう。もし短期的な成果が常に長期的な目標につながるのであれば、それでも問題はないが、実際には短期政策と長期政策が矛盾することが増えてきている。政府が長期的な視座で動けるかどうかも、有権者の判断にかかっている。
最近で特に印象に残っているのは、トランプ政権と機関投資家の対決だ。トランプ政権は、証券取引委員会(SEC)という当局を通じて、機関投資家にESG投資をやめさせようというルールを決定したが、機関投資家はそれに猛反発した。結果的に、実際にルールが施行される前にバイデン政権に移行し、そのルールは撤回された。
政府は権力を発動すれば、ニュー資本主義を強制的に排除することもできてしまう。政府の政策動向はやはり重要だ。どのような政府を選ぶのかも有権者の意思にかかっている。
(*3)経済社会システム総合研究所(2021)“社会的課題に関する継続意識調査(第2回調査)”