「そんなに反対するならロシアに行け!」という声
ロシアのウクライナ侵攻に関して、僕は反対しているし、YouTubeの収益をウクライナ赤十字社に寄付もしているが、かなり多い意見として「そんなに軍事侵攻に反対するなら、ロシアに行け!」というものがある。要は「ロシアに行かずに日本という安全な場所で偽善者ぶっているなら、ロシアに行って活動しろ」ということだ。
多くの人が知っていると思うが、ロシアでは政権批判をすること自体が犯罪で、捕まる可能性がある。今はまだ逮捕くらいかもしれないが、さらに新しい法律ができて死刑になったりするかもしれない。今はプーチンに権力が一極集中しているから、何がどうなるかわからないのだ。それでも僕に「ロシアに行け」と言うなら構わないけれど、「逆にあなたが私だったら、本当にロシアに行ってそれをやっているのか」という疑問を抱いている。
僕は小さいころから日本にいて、生活基盤は日本で、母語は日本語だ。ロシア語はなんとか聞いて理解することはできても、読んだり書いたりするのは苦手だ。そんな状態でロシアに行き、家を借りる手続きや銀行口座の開設をするのにどうしたらいいのかわからない。そして、自分の生活すべてを捨てて、ロシアに行って、反戦運動をする覚悟はもちろんない。
反戦運動のために自分の命は捨てられない
ウクライナの人たちはプーチンの独断で軍事侵攻をされて、否応なく巻き込まれ、生活も文化も壊されているのだから、ウクライナに対しては申し訳ない気持ちしかない。とはいえ、彼らを助けるために自分の命や人生、家族の命や人生を懸けられるかというと、僕は弱い人間だから、無理だと言うほかない。自分の命を投げ出しても、人を助けられるかどうか――。目の前で他人の子どもが殺されそうな場面に遭遇したとき、自分や自分の家族の命を犠牲にして助けることができるだろうか――。
僕は自分の命を優先して、助けられない人間だと思う。人を助けずに見捨てるなんてひどいかもしれないけれど、それが僕という人間なのだと思うことにしている。自分を正当化しようと思ったからか、ものすごく考えた。考えても考えても僕は弱い人間だし、偽善者だ。そのことを受け入れ、認めることにした。私の命が一番大事で何が悪い。だから、僕は安全な日本でできる限りの偽善をしようと思っている。
僕はロシア国籍を捨て、日本国籍への帰化を考えている。軍事侵攻があってより一層、生まれた国はもう頼れないと思っている。今はロシアの大使館に行くことすら抵抗がある。まるで無国籍の人みたいだ。こんなタイミングだから、いくら侵攻前に決意したと言っても、都合が悪いから国籍を変えるのかと思われるだろうがこの際、別にそれでもいい。