なぜロシア人はプーチンを支持し続けるのか
ロシア軍によるウクライナ侵攻は長期化の様相を見せ、ウクライナは粘り強い抵抗を続けている。その影響で石油や天然ガス、食品の価格が高騰。世界経済は深刻な物価高に直面することになった。
米国もNATOも長期戦を覚悟し、8月末にはプーチン大統領が軍の拡充のための大統領令を発出した。ウクライナは東部や南部をロシア軍に占拠され、女性や子供たちは国内外に避難している。ロシアも軍事面で多大なコストと人命の損害を出している。
このような悲惨な実情を前にしても、渦中のロシア国民はこの戦争や、プーチン大統領に対する支持をし続けている。
ロシアの世論調査機関「世論基金」によれば、プーチン大統領の支持率は、ウクライナ侵攻前には60%前後だったが、侵攻後は80%前後で推移している。同じく世論調査機関であるレヴァダセンターによれば、ウクライナにおける「特別軍事作戦」について、今なお約80%の人が支持している。
また、ロシア国民の約60%は、ウクライナの惨状に個人的には道義的責任を感じていないとの調査結果が出ている。つまり、ロシア国民の多くは、ロシアのウクライナ侵攻を自分たちの責任と感じることなく、軍事行動自体を支持しているというわけだ。
政府の立場を人々が共有する土壌
これは、ロシア国民の大半が、ロシアのウクライナにおける軍事行動は「正当なもの」であると感じていることを意味する。
実際、4月末のレヴァダセンターの世論調査によれば、ウクライナの惨状の責任は米国とNATOにあると答えた人が実に57%、ウクライナ自身にあると答えた人が17%、ロシアにあると答えた人は7%であった。
要するに、ロシアは米国やNATOによる脅威に対抗するためにウクライナに侵攻するほかなかったというロシア政府の立場を共有しているということである。
これが、ロシア国民が隣国への侵攻というロシア政府の暴挙を支持する一つの答えなのであるが、問題は、なぜロシア国民は政府の立場を共有するのか、という点にある。それがわからない限り、この紛争を理解することはできないだろう。