会社のブランドという大きな威光

また、会社のブランドという形でも大きな恩恵を受けていたことに気づくでしょう。特に大手企業に勤めていた場合、社名を伝えるだけで一目置かれ、取引先からも丁寧に扱ってもらえたりします。

ところが、独立するとそのブランドは使えなくなり、ブランドゼロの社名で勝負しなければなりません。

私も大手企業に勤めていましたが、独立前は社名を伝える際に誇らしく感じていました。しかし、独立後は誰も知らない自分で考えた社名を名乗ることが、とても恥ずかしかったことを覚えています。

また、大手から独立すると顧客や取引先の反応が変わることもあります。

「自分は顧客や取引先から厚い信頼を得ている。だから独立してもきっとこれまでと同じ付き合いをしてくれるだろう」

そう信じて独立したものの、独立後、前職の顧客や取引先を回っても態度が変わり、相手にされなくなったという話は少なくありません。前職時代に得ていた信頼は会社に対する信頼なのか、自分個人に対する信頼なのかで、独立後の周囲の反応は分かれます。

サラリーマンには味わえない経験がある

そのもののありがたさは失って初めて気づくと言われますが、独立すると、サラリーマン時代には当たり前のように享受していた恩恵の大きさに気づかされます。そして、それらの恩恵のない状況で営業し、事業を軌道に乗せ、人を育て、組織を作っていかなければなりません。それが独立です。

だからといって、独立をお勧めしないというわけでは決してありません。ここでお伝えしたいのは、サラリーマンであることのメリットをよく理解したうえで、独立するかどうかを判断する精度を上げていただきたいということです。

私は独立の支援をしているので、普段は独立の魅力やメリットについてお伝えしています。冒頭でもお伝えしたように、独立は多くの成長の機会が得られるものであり、独立してたくましくなっていかれる方が非常に多いです。

独立するとさまざまな未経験のことに直面します。そして、全てのリスクと責任を負いながら最終的な意思決定を自分で行い、未来の方針を決めて前に進み続ける。これはサラリーマンには味わえない経験です。この経験を通じて、多くの人はたくましくなっていきます。