日本で「脱マスクの旅」は実現しそうにない
日本でも、今まさに「全国旅行支援」が実施され、支援金や割引措置により、宿泊施設や飲食店などが若干のコストをかけても業績復活できる施策が導入されている。しかし、現在の日本のマスク状況では、欧州のような「脱マスクを起点とする経済復興への足掛かり」にはならなさそうだ。
仮に厚労省のルールに沿って旅行するとしたら、混雑していない屋外の観光地ではマスクなしで歩いてOK、屋内となる美術館や博物館、神社仏閣でも混雑していないのならノーマスクで過ごしても問題ないはず。ところが現実には、依然として施設ごとのローカルルールが存在し、ノーマスクで行動しようものなら、他の入場者が“遠くから”冷たい目で投げかける、あるいはそもそも係員に「マスク着用で」と促されるのがオチだろう。
裾野が広い旅行業界の復活で地方経済がどれだけ回復できるかといった論議に加え、首相をはじめ閣僚の誰かしらが「マスクを外して旅行をしよう」というキャンペーンでも打てば、業界を問わずさまざまな産業セクターで「アフターコロナの時代がついにやってきた」とばかりに経済の回りが良くなる絵も描けたかもしれない。
マスク順守が経済回復の遅れを生んでいる
しかし、現実は「お得に旅行できる良いタイミング」というポイントだけが独り歩きし、社会生活を根本から変えることになった「マスク着用」と「社会的距離」をどうするかという点は置き去りになっている。そう思うと「安く旅行できる」と単視眼的にマスコミが群がった構図は残念でならない。
11月にはサッカーW杯が開幕する。英国ほか欧州の多くの国々では、仕事を放り出してでもサッカー観戦する人々でパブやバーはおそらく満杯になるだろう。もちろんその場にはマスクをしている人などいない。その頃の日本では、引き続きマスクをして声を出してはいけない「黙食」と「無言観戦」を強いられているのだろうか。
だれもが筆者の友人のように、日本に来たらしっかりとマスクを着用してくれる外国人ばかりではない。そんな楽しくない社会状況では経済回復などなしえない。
極論ではあるが「マスク順守が日本経済回復の遅れを生んでいる」という現実が、われわれの前に突き付けられているのではないだろうか。