今年はインフルエンザの流行がやってくる?
第7波も多少落ち着きを見せてきた。朝一番から鳴りやまなかった発熱者からの問い合わせ電話も、今月に入ってずいぶんと減った。私は発熱者、有症状者には全例新型コロナウイルス検査を行っているが、7~8割だった陽性率(検査人数に対する陽性者数の割合)もここにきて肌感覚的には5割程度になってきている。
だがこの数字は、単に第7波が収束に向かっているという希望を私たちにもたらしてくれるものばかりとはいえない。今後はこれまで以上に発熱、有症状者については、新型コロナウイルス以外の感染症そして他の原因を考慮していく必要性を、われわれ医療者に再認識させることをも意味しているといえよう。
ようやく猛暑も去って朝夕の涼しい風には秋を感じるが、今後はさらに気温が低下し、冬の訪れとともに新型コロナウイルス以外の感染症、例えばここ2年はすっかり大人しくしていたインフルエンザの流行も意識し始めなければならない季節となってくるからだ。
ウィズコロナで日本はどんな社会になるか
その“感染症の季節”を目前にして、岸田内閣は急速に「ウィズコロナ政策」に舵を切り始めた。岸田首相は9月6日の記者会見において、これまで行ってきた新型コロナウイルス感染者の「全数把握」を9月26日より全国一律で廃止、「全数届出の対象を「(a) 65 歳以上の者、(b)入院を要する者、(c)重症化リスクがあり、新型コロナウイルス感染症治療薬の投与又は新たに酸素投与が必要と医師が判断する者、(d)妊婦の4類型に限定」すると明言。
また検査陽性者の自宅療養期間についても、有症状者の10日間を7日間に短縮、無症状者は検査と組み合わせて5日間で解除可能とするとの方針を明らかにするとともに、「国内外に蓄積した知見、専門家の意見を踏まえて、ウィズコロナの新たな段階への移行を進め、社会経済活動との両立、これを強化してまいります」と述べた。
本稿では、この政府の方針転換を踏まえて「ウィズコロナの新たな段階への移行」とはいかなるもので、それが私たちの未来にいかなる事象をもたらし得るのかについて述べてみたい。
そもそも「ウィズコロナ」とは一体どういう概念であろうか。日本語で言えば「新型コロナウイルスとの共存」あるいは「新型コロナウイルスとうまく付き合っていく」ということになろうか。確かに太古の昔から人類はウイルスと共存してきた歴史がある。この地球上から人類に害をもたらすウイルスを完全に駆逐することが不可能であるという事実は、誰一人として否定しないだろう。
その厳然たる前提の下に、私たちはウイルスとどう対峙していくべきか、という問いは永遠のテーマともいえる。そのうえで、今回の新型コロナウイルスとはどのように付き合っていくべきか、というのが現在私たちに求められている議論であろう。