円安でも日本のiPhoneは世界一安い

とはいえ、もうひとつ別の事実があります。実は日本は世界の中でも飛びぬけてiPhoneが安いのです。

これはiPhone14が発売された時に話題になったのですが、その時の記事(※)では「日本はiPhone14が世界で2番目に安い」とされていました。世界中のiPhone14の発売価格を比較するとそうだというのが記事の主張です。実際には世界一安いというのはアメリカの中でも例外的な「消費税がゼロの州」での価格です。それを言ったら世界で2番目に安い日本の価格は消費税込みの価格なので、もしインバウンドの外国人が世界中で免税価格を比較したら、日本のiPhoneは世界一安いということになるかもしれません。

※ITmedia「日本の『iPhone14』は世界で2番目に安い 世界37カ国の税込価格を円換算で比較 価格調査サイト調べ

円安のイメージ
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日本のiPhoneが安い理由は日本市場がアップルにとって重要だからです。当然のことですが日本人の7割がiPhoneを買ってくれている状態なので、アップルも簡単にはそのシェアを40%台には下げたくない。そこで日本人から見れば大きな値上げでも、アップルからみれば抑えた値上げになっています。

実際、1年前のiPhone13から今回のiPhone14への2万円の値上げは上げ幅でいえば21%の値上げになります。実はこの間の為替変動は32%ぐらいになっているので、為替通りにするのであればiPhone14は最低価格を13万円超にすべきでした。それをアップルはあえて抑えているのです。

「iPhoneは定価で買うものではない」というイメージ

もうひとつ日本でiPhoneが普及している理由は、携帯の販売店に携帯電話会社からたくさんのインセンティブが渡されているという事情があります。私の家族でこんなことがありました。母がiPhoneを使いこなしているという話を聞いて叔母がいよいよガラケーからiPhoneに買い替えようとしたのです。それで家電量販店に連れて行ったところ他社からの乗り換え契約となったことでiPhone本体は3万円台で手に入ったのです。

3万円台は特例だとしても、日本人の多くがこのように携帯電話会社からiPhoneを買っているので、本人は12万円ではなく6~9万円程度でiPhoneを手に入れたと思っているわけです。実際はそれで格安スマホよりは月2000円ぐらい高く通信料を払っていて、2年使えば差額で5万円ぐらい損をするかもしれませんが、とにかく「iPhoneは定価で買うものではない」と思っている日本人が一定数いて、それがiPhoneの高いシェアの一因になっているわけです。