以前は「iPhoneシェアが5割を超えるのは日本とアメリカだけ」といわれていましたが、最近ではスイスやデンマーク、カナダ、そしてオーストラリアなどもiPhoneシェアが5割を超えてきています。一方でドイツやフランス、イタリアやスペインなど、欧州でも比較的人口が大きい国ではiPhoneは3割前後のシェアしかありません。

その理由を平たく言うと「iPhoneは中流層以上の階層が好んで購入し、Androidはそれ以外の層が購入する傾向がある」からだと経済的には分析されています。ファクトとしてみるとその国の一人あたりGDPとiPhoneシェアには緩やかな相関関係が見られます。

【図表1】国別のiPhoneシェアの比較
出所=statcounterのデータを基にグラフは百年コンサルティング作成

コスパの良い店がにぎわう日本の異常なiPhone人気

このグラフからざっくりと傾向を読み取ると、途上国では圧倒的にAndroidのシェアが高く、先進国グループに入ってくるとiPhoneシェアが3割から5割のレンジになり、さらに先進国の中でも裕福な国々では最終的に5~6割のシェアレンジに上がっていく傾向が読み取れます。

もちろん国ごとの事情で例外はあります。豊かな国の中でもシンガポールのiPhoneシェアが低いのは中国との関係が強いせいでしょう。逆に台湾はアップルとのつながりが強いとみえてiPhoneシェアは高めに出ます。

このグラフを眺めると圧倒的に例外に位置付けられるのが日本です。経済的には低成長で、所得の二極化や若者の貧困が社会問題になってきていて、サイゼリヤやGU、百均などコスパの良いお店がにぎわう国であるにもかかわらず、なぜかiPhoneだけは国民が大好きなのです。

そこで冒頭の問題なのですが、もしiPhone本体が15万円の時代に突入したとしたら日本人はこの7割のシェアを維持できるのでしょうか? 一流会社の正社員家族は生活を維持できたとしても、ごくごく一般の庶民の懐事情で、円安による電気代やガソリン代、食費や学費などさまざまな値上げラッシュで家計を工夫しながら、iPhoneの大幅な値上げにどこまでついていけるのでしょうか?

これからはAndroidに乗り換える日本人が増える

iPhone6やiPhone8あたりからiPhoneを使い始めた方は覚えていらっしゃると思いますが、当時はiPhoneの価格は7万円前後が最低価格でした。ある意味、誰でも買えたのです。心理的には10万円の壁というものがあって、今回はその壁を超えてしまった。これから先は為替レート次第で、私たち日本人に価格をコントロールする力はなさそうです。

グラフから読み取れることは、

「もし今の日本経済の苦境がこのまま続き、最低賃金も上昇せず、円安でただ物価だけが上昇する事態に陥ったとしたら、将来的に日本のiPhoneシェアは40%台に落ち込むのではないか?」

ということです。あと1~2年でかなりの数のiPhoneユーザーがAndroidに乗り換える事態が起きるかもしれないのです。