理由が見えない「頭ごなし叱り」は国語力を低下させる

「結論」に相手目線の「理由」を添えた話し方をすることが大切です。この原則は、子どもの「叱り方」を考えるときにもとても大切です。叱りとは、「しなさい」「やめなさい」という「結論」の受け入れを相手に強いることが多いものです。ですから、相手目線に立った「理由」がなければ、なかなか耳を傾けてもらえません。

ひとつのことをきっかけに、あれもこれもと話が飛ぶ「ダラダラ叱り」や、「ダメと言ったらダメ!」式の「頭ごなし叱り」は、非常に「理由」が見えにくいものです。子どもからすればとても不快で、話を理解して受け入れようという意欲もわきませんし、力まかせに押さえつけられれば、反射的に委縮したり反発したりしてしまってもしかたありません。

怒る母と耳をふさぐ子ども
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ところで、すべての学びの土台となる「国語」の能力は、単語のひろい読みではなく、ひとつの単語が選ばれた「理由」、いくつもの単語の並びや文の並びを決める「理由」、つまり「文脈」を読み解く力を養うことによってアップします。どちらの叱り方も、言葉の裏にあるこうした「理由」を考えようとする姿勢を奪うため、子どもの国語の力に非常に悪い影響を及ぼしてしまいます。

国語力を高めるために欠かせない「要約する力」

子どもを叱る場面では、感情が高ぶっていることも多いので、相手目線に立った「理由」を添えながら落ちついて話をするのは難しいものです。そこで親御さんには、人の言葉に触れたときに、日ごろから「なぜ?」「どうして?」を自問する癖をつけていただきたいのです。

ゲームのような感覚でいいので、テレビで見たニュースやご家族からかけられた言葉、ご自分の発言に対しても、否定するのではなく、いったん受け入れたうえで、「ところで、どうしてだろう?」と「理由」を考える習慣を身につけてほしいのです。私たちおとなのほうが、言葉の「文脈」を理解する力を日々鍛えるようにすることが大切です。

大学入試の問題が記述化されていることの影響を受けて、最近は中学校や高校の入試でも記述式の問題が増えてきています。記述のしかたが上達するためには、「文脈」を理解する力も大切ですが、もうひとつ大切なものがあります。それは文章や話を「要約」する力です。

そこで、日ごろの会話の中で、子どもの話の「要点」にフォーカスして、「つまりこういうこと?」と要約して返してあげる習慣を身につけてください。親御さんの要約が的を射ていれば子どもから、「そうそう!」といったリアクションがあるはずです。

子どもの「そうそう!」をたくさんゲットしていけば、親御さんの話し方がしみていき、子どもの要約力もおのずとアップしていきます。子どもとの会話が、なごやかで親密なものにもなることでしょう。