店内で流れるBGMをどれだけ意識しているだろうか。たとえばコンビニエンスストアと牛丼チェーンでは流れているBGMのテンポが明らかに異なる。そこには「音声マーケティング」という考え方が反映されている。Screenless Media Lab.の堀内進之介さんと吉岡直樹さんの共著『SENSE』(日経BP)より紹介する――。(第3回)
メトロノーム分離アクションと無地の背景
写真=iStock.com/Esin Deniz
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音は聴覚以外の感覚も動かす

音を聴いたとき、聴覚以外の別の感覚が連動しているということもよく調べられています。その製品の認知にどう影響を与えているかを調べた実験も数多くあります。

ポテトチップスの実験があります。

これはポテトチップスをかじりながら、ヘッドホンで音を聴くというものです。音は参加者の咀嚼の様子を録音して、音のレベルを増幅、減衰させたものです。「バリバリ」、「ガリガリ」を幅を持たせてコントロールした音をいくつか聴かせました。

その結果、音の大きさが大きくなると、ポテトチップスの歯ごたえや硬さに対する参加者の感覚が大きくなりました。つまり、「バリバリ」と大きい音がすると、歯ごたえが強くあるように感じたり、硬く感じたりしたのです。

食べているもの自体は一緒で、ポテトチップスそのものは音がしないくらいに柔らかいものを使っているのですが、音だけ聴かされると脳が騙されて、歯ごたえを感じてしまうわけです。

興味深いのは、高周波数の音だけを増幅すると、チップスがより鮮明で新鮮に感じられる結果が得られるという点です。反対に、低い周波数の音を増幅しても、歯ごたえや新鮮さには影響があまりないという結果が出ました。

例えば、ニンジンをかじるときの「サクッ」、セロリを折るときの「パキッ」のような音の高周波数の音だけを増幅させられると、新鮮な感じがします。

では、本当は新鮮なのに低周波の音をつけたら歯ごたえなく感じるのでしょうか。

実は、そうはなりませんでした。

われわれは音に騙されている

この研究の成果を応用すると、全体の音のレベルと周波数を操作すればいいということがわかります。電動歯ブラシをより快適に感じさせたり、炭酸飲料のソーダをより強く実感させたりすることもできます。「シュワー」という音を聴きながら飲むと、あまり炭酸が強くなくても「シュワー」と感じるようになるのです。

こうした手法は広告の中でよく使われています。音をうまく使うと、他社製品より炭酸が強い印象を消費者に与えられます。

これは『SENSE』の第1章でお話しした、機内食の際にBGMを変える「ソニックシーズニング」と似ています。音で「味を振りかける」お話ですね。