コンビニと牛丼屋のBGMの違い

さきほど牛丼屋とコンビニエンスストアとひとくくりにしましたが、両者で流れる音楽は明らかに違います。みなさんもぜひ確認して欲しいのですが、牛丼屋のほうがテンポが速いように感じられるはずです。

これは業態の違いにもよります。牛丼屋はお客さんがほぼ同じ客単価です。牛丼を2杯も3杯も食べる人はほとんどいません。ですから、ガツガツ食べてもらって回転を可能な限り上げたい。早く食べてもらって、早く店から出ていってほしいのでBGMのテンポを速めています。

一方コンビニは、長く滞在するほど購入額が上がる可能性が見込めます。コンビニでの平均滞在時間は3、4分だといわれていますが、それをいかに長くするかに力を入れています。

ですから、時間帯に合わせて居心地がよくなるように、テンポを落とした曲をかけ、ひとつの放送プログラムを長くするなど工夫を凝らしています。

音を変えるだけで働きやすさが変わる

関連するエピソードに面白いものがあるので、ひとつ紹介します。

私たちのところに、ある大きな物流会社から相談が持ち込まれました。倉庫の保管と配送を請け負う企業でしたが、常に人手が足りないという悩みを抱えていました。

そこではなかなか人が定着しません。手っ取り早いのが賃金の引き上げですが、限度があります。働きやすい環境をつくって、定着率を上げられないかという相談でした。

私たちが注目したのは休憩時間の休憩室の音です。

音楽は、時間感覚に対しても影響するという研究があります。物理的な時間は同じでも、BGMによって長く感じたり早く感じたりするのです。

休憩時間は10分や15分と時間が限られています。例えばアップテンポな曲を流すと、

従業員は15分をものすごく短く感じますが、スローテンポの音を聴くと同じ時間でも長く感じる傾向にあります。BGMによって長く休める印象を与えられます。

このようにビジネスの現場でもBGMを戦略的に使える機会は少なくありません。