良質な原材料を求めたら、ジャスト・イン・タイムに行き着いた

「そこで、うちでは生産者の方にお願いして、シャトレーゼのためにビーンズクラブを組織していただきました。エリモショウズを継続的に適正な価格で買うという契約をして、その代わり、できるだけ有機栽培に近い小豆作りに取り組んでいただいています。そうすれば、生産者の方々も安心して小豆を育てることができるのです」

質のいい原材料を確保するためには生産者が安心して農家経営できるような環境にしないといけない。

齊藤はそこまで考えて、原材料の仕入れをシステムとして構築した。

ファーム・ファクトリー構想は質のいい原材料を手に入れるためにスタートしたことだが、問屋などの、中間業者を省いたことは収穫から製造までの時間を短縮するジャスト・イン・タイムの確立でもあった。

齋藤寛会長
撮影=プレジデントオンライン編集部

品質のためなら社員自ら山へ採取しに行く

ファーム・ファクトリー構想で契約農家から直接仕入れているメリットは質のいいもの、新鮮なものが手に入ることだけではない。作り手の顔が見えることでもある。

春になると店頭に並ぶ桜餅の葉っぱだが、シャトレーゼでは静岡のオオシマザクラの葉だけを使うことにしている。外国産の桜の葉の塩漬けであれば1枚1円で仕入れることができるのだが、同社では1枚10円の国産の桜の葉にしている。少しでも安全なものにしたいのと、トレーサビリティーがあるからだ。

草餅に使うよもぎの葉についてもシャトレーゼは国産品を使用している。かつて、同社は問屋から仕入れていた。だが、それは着色した葉っぱだとわかったので、自分たちで山へ行って採取することにしたのである。

山梨県に本社がある会社でなければできない仕入れ方だ。

よもぎの旬は春先から6月くらいまで。この時期になると調達担当の社員が山を歩き、1年間で使う約7トンのよもぎを手摘みする。

むろん、無断で採ってくるわけではなく、山林の地主に交渉し、謝礼を払って摘んでくる。社員にとっては楽ではないが、しかし、今では春夏の恒例イベントともなっている。よもぎの採取もまたファーム・ファクトリー構想の延長として実現したことだ。ファーム・ファクトリー構想は同社の数々のヒット商品を下支えする考え方なのである。

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