自転車でものを運ぶと、目立つ
三浦 僕もけっこう拾い物をするんです。4年前に中古マンションを買ってリノベーションしたときに、お金が足りなくなったこともあって(笑)家具は、ほぼ中古品と拾い物で揃えました。
堤 三浦さんが、拾い物。はぁー。
三浦 今日は粗大ゴミの日だったので、立派な額が捨ててありましたね。持って行こうと思ったのだけれど、重いのでやめました。ぼくの家の近所は、最近は耐震のために家を建て替える人が多いので、「おばあちゃんが大切にしていたものだけど」という古い良いモノが捨ててある。捨てるだけじゃなくて、玄関の前に「どうぞ持っていってください」と貼り紙がしてある人も多くて。それを拾っていると、けっこういいものがあるし、なにしろタダですし。一応セレクトしていますが、どんどん自分の家が拾い物でいっぱいになってきて。
堤 鈴本さんの家と同じですね。
三浦 さすがに家そのものまでホームレスの暮らしはできないんだけど、拾って工夫すれば暮らせるよっていう鈴本さんにひじょうに共感したんです。しかも、最低限の暮らしではなく、それなりの暮らしができる。僕が暮らしているのは杉並なので、金持ちがいいものを捨てている。拾って暮らしたほうが、よりクオリティ・オブ・ライフを上げられちゃうわけです。
堤 なるほど。
三浦 映画を観ていて、もうひとつ、鈴本さんに自分が重なったことがあるんです。僕はリノベーションしたマンションと、仕事場と、自宅の3地点を行ったり来たりするのですが、車を運転しないものですから、たまに本を運んだり、家のビデオが壊れたからと仕事場から持っていったりするときに、自転車に荷物を積んで行くんですよ。ふと思うと、今、自転車でモノを積んで走っている人っていないんですね。そば屋でも、新聞屋でもバイクでしょう。荷台にモノを積んで走っている中年のおじさんは、杉並あたりではちょっと怪しまれる。浅草のこのあたりは、まだたまにリヤカーを引っ張っていく人がいますけれど。今は、自転車にそもそも荷台がない。
堤 そうですね。ブレーキすらないですからね(笑)。
三浦 そうそう(笑)。