夫の死亡保険金が請求の半額に

たとえば、保障対象となる入院日数に満たないとか、病院から交付された明細書に「手術」と書いてあったので請求したら、約款で除外されている軽微な手術だったとか、60日に1回という制限があったなど、内容はさまざまです。

入院や手術だと受け取れる金額は数万円から数十万円程度ですが、死亡保険金や高度障害保険金、特定疾病保険金などの場合、数百万円から数千万円となることが多く、受け取れないと分かった時のショックはより大きいと思います。2つの事例をご紹介しましょう。

【事例1】
Aさんの夫は、旅行中に宿泊先の温泉で突然倒れて亡くなってしまいました。夫は2000万円の死亡保険に加入しており、同額の災害割増特約を付加していました。亡くなる直前まで元気だったので、Aさんは夫が足を滑らして頭を打ったために死亡したと思い、基本保障の死亡保険金2000万円と特約の災害死亡保険金2000万円の計4000万円を請求しました。
ところが、医師の死亡診断書によると、Aさんの夫の直接の死因は内因性のくも膜下出血によるものとなっており、災害には該当せず、基本保障の2000万円のみの支払いとなりました。

悪性がんでないから支払い拒否

【事例2】
Bさんはがんの治療費を心配して、保険金1000万円の特定疾病保障保険に加入していました。多くの人が生命保険に特約として付加している一般的な保障です。支払事由は「所定のがん(悪性新生物)に罹患りかん」「所定の急性心筋梗塞、脳梗塞に罹患し所定の状態に該当」などです。
契約から数年後、がんと診断されたBさんは疑うことなく保険金の請求をしましたが、支払事由に該当しないとして支払いを拒否されました。Bさんは医師から「がん」と告知されましたが、厳密には上皮内新生物であって悪性新生物ではなかったためです。

事例2では、本来であれば悪性新生物でなかったことを喜ぶところですが、Bさんは激しくショックを受け、「約款に書いてあるくらいでなぜ出ないのか」と憤懣ふんまんやるかたないご様子でした。

保険契約には形がありませんから、触ることも使って確かめることもできません。約款が商品そのものであると言っても過言ではありません。ところが、「保険は契約である」ことを軽く考えてしまう人は多く、告知義務違反はその典型的なケースです。非該当理由のうち、「告知義務違反による解除」は「支払事由に該当せず」に次ぐ2番目に多い件数となっています。

契約前に罹っていた病気について告知をせず、加入後に別の病名で入院や手術等をした場合でも、不告知の内容と請求した病気との間に因果関係が認められれば給付は受けられません。