一時停止のせいで歩行者が死角に入る場面も

しかし信号機があれば、対応はシンプルで分かりやすい。歩行者の有無にかかわらず、信号機の指示に従えば良いからだ。従って横断歩道には、可能な限り信号機を併設すべきだ。そうできない事情があるならば、交通量が少なく、走行速度も低く、なおかつ見通しの良い道路に限定せねばならない。

特に危険な横断歩道は信号機のない2車線道路だ。私はかつて次のような経験をした。神奈川県内にある2車線道路の左車線を自動車で走行中、信号機のない横断歩道の左脇に、歩行者が立っていることを認識した。私が横断歩道の直前で停車すると、歩行者が左側から右側に向かって横断を開始した。

その時、私の車両のルームミラーとドアミラーに、右車線を後方から走ってくる車両が映った。減速しておらず、横断中の歩行者は、私の車両の陰に隠れて右車線のドライバーからは見えない可能性も高い。そこで私はサイドウインドーから手を出して、減速するように促した。知人も私と同様の経験をしており「慌てて右側のドアを開いた」という。

信号のない2車線の横断歩道でヒヤリとした場面
【図解】信号のない2車線の横断歩道でヒヤリとした場面。Aの車が一時停止した場合、Bの車からは歩行者が見えない可能性が高い

止まるのと進むのと、実はどちらが安全か

道路交通法第38条2項には、横断歩道の手前で停車している車両がある場合、その側方を通過する時は、前方に出る前に一時停止しなければならない、という趣旨の記載がある。

従って前述の右車線を走る車両のドライバーも、私の車両の右側を通過する時に一時停止しなければならないが、それを怠れば事故に直結する。私が横断歩道の直前で停車した遵法運転により、事故が発生する可能性もあるわけだ。

そのために私は、2車線道路の信号機のない横断歩道では、その脇に歩行者が立っていても停車するとは限らない。2車線道路は概して走行速度も高く、前述のような後続車両が事故を発生させる心配がある時は、道路交通法の違反を認識しながら通り過ぎる場合もある。

私が停車して、歩行者が交通事故の犠牲になる危険が高まるなら、通り過ぎるのが正しい現場判断と考えるからだ。そして歩行者は、車両の流れが途絶えた時に、安全に渡っていただきたい。

ここで問題になるのが、横断歩道における取り締まりだ。今までは安全を優先させる現場判断により、通り過ぎていた状況でも、取り締まりが頻発するとあえて停車する。それによって危険が生じかねない。