交通事故を減らすにはどうすればいいのか。カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎さんは「警察は信号機のない横断歩道の取り締まりを強化しているが、横断歩道で車が止まることでかえって事故を誘発する場合がある。物陰に隠れて一時停止違反の車を探すよりも、信号機の設置や歩行者のサポートに注力すべきだ」という――。
道路標識
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警察が横断歩道の取り締まりを強化する理由

2022年の交通安全白書によると、2021年における交通事故の死者数は2636人であった。1970年の1万6765人に比べると、約16%まで減少している。死亡した状況を見ると、最も顕著に減ったのは自動車乗車中の事故だ。1970年頃をピークに減り始め、1980年代の後半から保有台数の増加によって一時的に増えたが、1990年代以降は、安全装備の充実によって大幅なマイナスに転じている。

一方、歩行中の死亡事故は、歩道の整備などによって1970年頃から1980年頃にかけて大幅に減ったが、この後は横ばいが続く。自転車乗車中の事故も同様だ。死亡事故の推移を見ると、自動車だけが安全性の向上によって大きく減少している。

2021年に発生した死亡事故の件数を見ると、最も多いのは自動車の衝突事故で791件(約30%)だったが、2位は歩行者横断中で、612件(約23%)を占める。この状況を受けて、警察は信号機のない横断歩道の取り締まりを活発に行っている。

歩行者に譲られたら、あなたはどう対応するか

横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいる時は、車両は横断歩道の直前で停車して、歩行者の通行を妨げてはならない。このことは道路交通法第38条1項にも明記されている。しかし横断歩道の取り締まりを増やしたことで、別の課題も発生してきた。

例えば車両が横断歩道の直前で停車したのに、歩行者が渡らず、ドライバーに「先に行け」とジェスチャーで指示した場合だ。特に高齢者は、歩行速度が遅いことを気にするのか、車両に対して通過を促すことがある。この歩行者の指示に従って、そのまま車両を発進させたところ、取り締まりの対象になったことがニュースとして取り上げられた(その後、処分は撤回)。

この事例では、横断歩道の脇に歩行者がいるのに、無視して停車せずに通過したわけではない。一度停車して、歩行者が横断歩道を渡ることができるように配慮した。従って歩行者の通行を妨げてはいない。その上で歩行者が渡らず、車両を進行させる趣旨の指示を行ったから、ドライバーはこの意思を受け入れて車両を発進させた。それなのに取り締まりの対象になった。