スーパー業界で「呼び込み君」が大ヒットしているワケ

音による注意の方向づけもあります。

音は私たちを意図しない何かに対して注意を向けさせます。「呼び込み君」が最近の面白い例として挙げられます。

呼び込み君本体(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
呼び込み君本体(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「呼び込み君」は見た目はスピーカーに簡単に頭と手が生えたような不思議な置物なのですが、音声を録音して、それを繰り返し再生できるスピーカーです。

スーパーマーケットの売り場などで「ポポポポポー」という電子音を聴いたことがある人もいるかもしれません。

「ポポポポポー」という謎の音楽に注目が集まりがちですが、マーケティングの穴を見事に突いています。「呼び込み君」はモノラルで音をつくっているからです。

モノラル音だから効果がある

ステレオ音とモノラル音では人は受けとめる感覚が異なります。

モノラルは、聴き手が音の出所を突き止められますが、ステレオではできません。そしてこれを、スーパーの店内で、どこから流れているか方向がわざとわからないようにステレオで流しています。特定のスピーカーから大きな音がすると嫌悪感をお客さんに抱かせるので、全体的に均等に音が流れるようにしています。

このような音環境で、モノラルの音で「こちらこちら、今日の特売はこちら」と「呼び込み君」から声が流れてきたらどうでしょうか。

おそらく、多くの人がその方向を強く意識するはずです。スーパーの常識を覆す音の効果で、結果的に注意の方向づけに成功しています。

以上のように、私たちはデザインされた音声情報に1日の間に何時間もさらされています。私たち自身が意図する、意図しないにかかわらず、音から影響を受けて思考したり、行動したり、判断してしまう環境が既につくられています。