若い世代ほど王室支持率は低い

王室は英国にとってプラスという声は62%で、マイナスの12%を大きく突き放しているように見える。しかし世代ごとにみると、王室を存続すべきだと考えている英国人は65歳以上で86%(王室を廃止して共和制に移行すべきとの意見は8%)、50~64歳75%(同17%)、25~49歳58%(同25%)と年齢が下がるほど支持率は低くなる。次世代の18~24歳の王室存続派はわずか47%で、共和制移行論者33%と肉薄している。

世論調査に詳しいジョン・カーティス英ストラスクライド大学教授はニュース分析サイト「カンバセイション」への寄稿で「英国のような近代民主主義国家において、王室制度が存続するためには国民の同意を得る必要がある」と指摘する。

1983年の第1回「英国社会意識調査」で65%が王室制度は「非常に重要」と回答し、さらに21%が「かなり重要」と答えた。92年、エリザベス女王が「アナス・ホリビリス(ラテン語でひどい年の意)」と認めたように、チャールズ皇太子とダイアナ皇太子妃(いずれも当時)をはじめ3人の子供が別居または離婚したことで王室への信頼は根底から揺らいだ。

【図表1】英国にとって王室は重要(英国社会意識調査)

94年には計66%が王室制度を維持することは「非常に重要」か「かなり重要」と考えていた。それ以来、毎年のようにほぼ同じ結果が出ている。だが、カーティス教授によると、「王室制度に対する国民の信頼は驚くほど強固で安定しているように見えるが、英国人のほぼ全員が王室を支持していた83年の水準に戻ることはない」。

エリザベス女王の「負の遺産」

96年にチャールズ皇太子とダイアナ皇太子妃が離婚し、97年夏にダイアナ元妃が交通事故で亡くなったことで、王室制度を「非常に重要」と考える人の割合が初めて30%を下回り28%まで落ち込んだ。最近になってアンドルー王子の未成年者性交疑惑、ヘンリー公爵とメーガン夫人の王室離脱と2人の子供に対する人種的偏見疑惑で再び英王室は紛糾し始めた。

王室の存続を「非常に重要」「かなり重要」と考える人は2012年には76%だったが、昨年は最低水準の55%まで急落した。チャールズ国王は王室支持率が過去最低になった時に王位を継承したのだ。今回、壮大な王位継承イベントで一時的に王室人気は回復したものの、エリザベス女王が残した負の遺産はあまりに大きいと言わざるを得ない。

国葬での葬送行進
国葬での葬送行進(2022年9月19日、ザ・マルで木村史子撮影)