政治スタンスとしては正反対の立憲民主党と日本維新の会が10月の臨時国会での共闘に合意した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「国葬問題で支持率を急速に落とした自民の凋落ぶりを見て、維新は立憲と組むほうが良いと判断したのだろう。ただ、これがこの先の選挙協力につながることはなさそうだ」という――。
犬猿の仲だった立憲と維新の共闘
筆者が思っていたより早く、野党陣営に動きがあった。野党第1党の立憲民主党と、第2党の日本維新の会が9月21日、10月3日に召集された臨時国会で、6項目の部分的な国会内「共闘」で合意したのだ。部分的とはいえ、犬猿の仲だった立憲と維新の「共闘」は、各方面に波紋を呼んでいる。
7月の参院選以降、選挙に「勝った」はずの自民党の状況は目を覆うばかりだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題が拡大の一途をたどる一方、安倍晋三元首相の国葬に対する反対世論が急拡大し、岸田内閣の支持率は劇的に下落している。こんな状況で野党がいつまでも「多弱」のままでいて良いはずがない。今回の立憲と維新の動きは、筆者も素直に歓迎したい。
政界はこの動きが岸田政権に与える影響に関心が向いているが、これを野党間の力関係という観点で見れば、今回の合意によって、立憲が野党の中核として、維新に対し優位に立ったことがはっきりしたとも言える。メディアがこの1年近く「立憲下げ、維新上げ」という誤った印象操作を散々繰り返したことで、多くの国民もある種の勘違いをしていたかもしれないが、野党陣営はようやく本来の構図に落ち着き始めたということだろう。
そして、この合意は立憲以外の野党、特に維新に大きな混乱をもたらす可能性がある。しばらくなりを潜めていた野党陣営の流動化が、どうやら再び始まりそうだ。